井上弁護士が東京弁護士会の知財法研究会で“愛知製鋼による営業秘密刑事事件”について特別講演をしました

22年9月26日 News

以下、井上弁護士から報告です。

弁護士の井上健人です。

9月21日、第二東京弁護士会知的財産権法研究会にて、「営業秘密の刑事事件の実務―愛知製鋼裁判の経緯と裁判が提起した問題―」と題する講演をさせていただきました。講演内容の概要は、添付の資料のとおりです。
私から、3月18日に無罪が言い渡された裁判について、検察官や弁護人の主張立証活動といった裁判の内容を報告し、最後に、この度の刑事裁判が提起した営業秘密の刑事的保護の問題点を指摘しました。
会場からは、多くの質問や意見が寄せられ、大変有意義な講演会となりました。とりわけ、弁理士や、弁護士の中でも知的財産権法の分野に力を入れて取り組まれている研究会のメンバーの方々から、今回の検察官による営業秘密の主張の仕方があまりにも「無理筋」であるように思うという声が多数聞かれたことは、本藏氏・菊池氏、さらには、私ども弁護人の認識が真っ当なものであったと、改めて自信を深めることができました。
今回の刑事裁判では本藏氏や菊池氏の無実が証明されたわけですが、愛知製鋼は、現在も本藏氏らを被告として民事訴訟を続け、無罪刑事判決の出た裁判で問題となった情報と同じ情報を「営業秘密」だと主張しています。この民事訴訟において、愛知製鋼は、刑事裁判で「被害者」だということを理由に取得した裁判の証拠を多数利用しています。その反面、本藏氏側は、刑事無罪判決から言わせれば「無理がある」方法によって起訴され、無実を勝ち取ったにもかかわらず、民事訴訟においては、刑事訴訟法第281条の3及び4の開示証拠の目的外使用の禁止という規定を理由に、刑事裁判の証拠を自由に用いることはできないでいます。真実「被害者ではなかった」者が刑事裁判の証拠を自由に利用でき、全く謂れのない起訴によってむしろ被害を被った者が刑事裁判の証拠を自由に使えない。講演の中では、こうした明らかな不正義についても訴えたところ、不正競争防止法の改正等に携わられている弁護士の方からは、この深刻な問題について理解をいただき、検討するとのお言葉をいただきました。
最後に、会場からの感想として、「今回のような裁判が起きるようでは、日本ではベンチャー企業は育たないだろう。」というご意見も聞かれました。全く同感です。大企業が、新たな研究開発に果敢に挑むベンチャー企業の挑戦を妨害するようなことが繰り返されるようでは、この国の産業の衰退は必至です。今回の無罪判決が、より良い不正競争防止法の在り方、法の濫用ではなくより正しい不正競争防止法の利用につながっていくことを、一人の法律家として期待してやみません。

添付資料:第二東京弁護士講演会_プレゼンテーション資料
添付資料:起訴状の公訴事実の内容
添付資料:過去の裁判判例一覧
添付資料:特許公報
添付資料:公開特許公報