検察側と弁護団側の証人尋問はすべて終了 今後被告人質問へ

21年7月16日 NEWS

検察の立証方針は、秘密漏洩の立証に物的証拠は不要とし、西畑証人他の証言で立証ができるというものでした。
しかし、①検察側の証人尋問(9名:西畑、山本、浅野、青山、平尾、佐々木、細野、有滝、松永)の結果、証人毎に愛知製鋼の秘密内容が異なり不特定でよくわからないこと、②しかも証人らが主張する秘密を記載した社内資料は存在しないこと、および③FA電子は愛知製鋼の秘密の開示を受けておらず、秘密漏洩はなかったことが浮き彫りになりました。
本来ならこの時点で裁判は公訴棄却されてしかるべきだったと思います。

次に7月16日までの間の弁護団の証人(4名:出田、坂口、清水、竹内)の証言で、①検察が、秘密工程が記載されているとした証拠資料には、驚くことに愛知製鋼の秘密工程と称する基本工程は記載されていなかったことが判明しました。②マグネ社の装置を製作したFA電子の技術者によって、愛知製鋼の装置とは異なる機能と構造・工程を有する装置であることが明らかにされました。さらに、清水証人や竹内証人が捜査段階で脅迫された事実も証言されました。

以上で本裁判の証人尋問はすべて終わり、残るは本蔵・菊池の両被告人質問だけです。

以下は、4名の証人の証言の詳細です。

愛知製鋼の基本工程は公開情報だった。

21年6月16日

(1)FA電子の出田証人

出田証人は、FA電子が13年4月9日に本蔵氏から依頼を受けたワイヤ整列装置の製作を担当した技術者で、以前に類似装置の製作経験があり、FA電子が保有していた技術で製作したこと、およびその装置をカタログに掲載してPRしており公開情報であったことを証言した。1mmに2本のワイヤを張る程度の技術は容易(愛知製鋼の装置仕様)であるが、本蔵氏から依頼された1mmの隙間に20本のワイヤを張る技術の開発(=ピンガイド方式の考案)は非常に難しかったことを証言した。FA電子の装置は愛知製鋼の模造品でないことが明らかになった。

その後本蔵氏から、ピンガイド方式をワイヤ基準線方式に変更するための装置の改造を依頼されたが、非常識だと反対した。しかしお客の要望なので、自動回転台、CCDカメラ、位置ずれ検出装置、補正制御用コンピュータなどの装置の改造を行ったと証言し、マグネ社においてさらなる開発が行われたことが明らかになった。

これらの証言について、検察は一切反論しなかった。代わりに、出田氏のメールの中に本蔵にCCメールしていた事実をとらえて、本蔵とのやり取りを証言させようと出田氏を追及したが、本蔵氏とは面識はないし、やり取りもないと否定された。

マグネ社の独自の技術開発を証言。

21年6月16日

(2)阪口証人

阪口証人は、ワイヤ基準線方式に変更した装置を使い、5年間の歳月をかけて、苦労して操作プログラムを開発したことを証言した。出田・坂口両証人によって、ワイヤ基準線方式の本蔵特許(=ワイヤ整列装置特許)が画期的な技術であることが裏付けられた。検察はワイヤ基準線方式なる技術は20年前から愛知製鋼が保有していたと主張をしているが、完全に否定された。

検察は、これらの証言については一切反論しなかった。

秘密管理性で検察と対決。

21年7月16日, 21年6月16日

(3)元愛知製鋼参与 の清水証人

清水証人は、①検察は、秘密情報の記載されている書類(QC工程表、作業標準など)が持ち出されたと主張したが、それらの書類には問題の秘密は記載されていないこと、と検察が主張する秘密なるものを記載した社内書類を見たことがないと証言した。②検察は、ワイヤ挿入装置は秘密管理エリアに指定して秘密管理していたと主張したが、そのような事実はないと否定すると同時に、秘密管理していたのはワイヤ挿入装置ではなくて、マイクロコイル製作工程であると証言した。以上の証言で、検察が主張する秘密工程なるものが、社内で秘密管理されていなかったことが示唆された。
また、③検察は12年12月4日のリコーとの会議に菊池が参加し、それが事件の端緒であるかのような立証をしているが、菊池ではなくて自分が出席していたと証言し、証拠として議事録を提出した。有滝証言(菊池が参加していた)は、事実誤認との疑いが残る。

清水証言に対して 検察は一切反論をしなかった。

その代わりに、本蔵被告とは学生時代からの付き合いだとか、なぜ裁判に傍聴に来ているのだとか、と質問し、本蔵氏の個人的つながりを強調して、証言は信用できないとの印象づくりに努めたが、清水証人から、真実を守りたいからだと反撃された。
愛知製鋼からは、“証人になるな”との圧力があったが、断ったとの証言もした。

秘密の特許性(技術的価値)で検察と対決。

21年7月16日, 21年7月9日

(4)元愛知製鋼知的財産室室長 の竹内証人

1)検察は、ワイヤ挿入装置は特許として技術を公開せずに、社内でウハウとして秘密管理していた特別に重大な技術であったと主張したが、竹内証人は、それは特許性がないからノウハウ管理としただけだと検察の主張を否定した。証拠としては、①本蔵氏が、ワイヤ挿入装置は基本特許や改良特許のように高度な技術ではなくて、社内ノウハウに相当する程度の技術である旨のコメントした証拠が残っていること。また②愛知製鋼は重要な発明はすべて知的財産室に届け出ることになっていたが、それは提出されていない以上、ワイヤ挿入装置には特許性は無いと考えていたと思われると証言した。③愛知製鋼の特許戦略では製造装置を含め複合的に特許出願をすることになっていたので、もしワイヤ挿入装置の特許性があれば出願していたはずであることを指摘し、検察の主張は矛盾だらけであることを明らかにした。

2)検察は、青山氏による特許鑑定を根拠に、本蔵特許とアイチ装置(西畑レポート装置)は同じだと主張したが、竹内証人は、青山鑑定の問題点を指摘して、鑑定とはとても言えない杜撰なものだ。両装置は大きく異なっていると証言した。

3)竹内証人は、本蔵特許は愛知製鋼の1号機の秘密を流用して出願したものだと警察調書に押印したが、それはアイチの技術を一切知らないと説明したにもかかわらず、脅迫されて調書にサインさせられたもので、無効だと証言した。本蔵特許出願にあたって、本蔵特許の特許性5点を明示した証拠資料と特許庁審査官とやり取りした資料を説明し、本蔵特許の進歩性を明らかにした。これらの証言に対して、検察は一切反論をしなかった。

4)代わりに、弁理士試験に不合格になったとか、上司の了承は取っていたのか、会社の秘密文書をなぜ退職後も保有しているのか等、知的財産室長としての竹内氏の資質・能力に問題があるかのような印象づくりの質問を繰り返した。逆に、秘密文書の原紙は当然会社が保管しており、コピーや現役時代に自分が作成した資料やメモは個人が保管しておくのが慣行となっていた。後輩からの相談に対応するなどのための慣行であったことを証言した。会社とは個人的利用はしないとの暗黙の了解があるが、今回は裁判証拠として公の目的であることを考慮して提出することにした。と社会正義に沿った行動であると反撃した。