作り話(本蔵と村田製作所による愛知製鋼のMIセンサ事業乗っ取り陰謀説)の破綻

21年3月17日 NEWS

検察側証人 元村田製作所の細野証人

検察は、細野証人から、村田製作所はアイチのMI事業の買収を検討しており、本蔵しに協力をいていただいていたとの証言を引き出して、このことが事件の動機であることを立証しようとした。
その証拠に、1)12年7月に本蔵からAMI買収の話があった。2)11月には、四社連合の話を持ち掛けられた。3)鵜飼常務を紹介するなど村田製作所によるMI事業買収工作への協力していただいた。4)買収工作失敗後は、本蔵氏に開発資金を提供してMI技術を手に入れようと企てた。との証言を引出した。これらが事件の背景であり動機であることを示唆した。

弁護団は、証拠を提示して細野証言が事実を全て曲げて証言をしていることを示した。

証拠1)本蔵は、村田製作所が高性能加速度センサを開発し、愛知製鋼が次世代MIセンサ(=磁気ジャイロ)を開発して、両者で6軸モーションセンサを開発しようと合意していたことを証拠で示した。この枠組みでは、村田製作所にはMI技術は提供されない。

証拠2)6軸モーションセンサの開発推進にあたり、7月のAMI買収を進めたが、この提案は、村田製作所にはMI技術は提供されないので、村田製作所にその気が無くて自然消滅した。この点は細野証人も認めた。

証拠3)愛知製鋼が次世代MIセンサの開発を断念したことを受けて、11月に本蔵は四社連合とJSTとで、次世代MIセンサの開発への協力を提案したが、村田製作所はその案を拒否し、愛知製鋼にMI事業の買収を申し入れた。これで本蔵との協力関係が破綻した。本蔵は村田製作所とは関係なく次世代MIセンサの開発を進めることを通告した証拠を示して、検察が主張する村田との共謀の事実はないことを立証した。

証拠4)本蔵は、当時愛知製鋼のMIセンサ事業を3社が買収を希望しており、競争して頂くことがアイチのためである旨を伝えて、村田製作所に買収交渉相手として鵜飼常務を紹介した証拠を提示した。さらに、買収交渉には、会社同士のことなので、本蔵は拘わらない旨のメールやり取りを証拠提示し、共謀事実を否定した。

証拠5)13年2月に、愛知製鋼に拒否された村田製作所は、四社連合参加する姿勢に転換した。共同開発契約を締結して推進することになった証拠を提示した。

証拠6)村田製作所とマグネ社の契約では、村田製作所には通常実施権の提供しか約束されておらず、村田製作所がMI事業を独占できる枠組みではなかったことを証拠で示した。
細野証人は、検察からの質問に対しては、その趣旨に沿って証言していたが、弁護団の反論に対して、記憶にないと逃げようとしたが、メール他の証拠を確認させられて、しぶしぶ認めざるを得なかったのが印象的であった。

さらに、本蔵らはGSRセンサ開発における村田製作所の開発負担について、村田製作所は2年程度一時的に参加しただけで、10%程度に過ぎなかったことを説明し、マグネ社の開発は村田製作所の主導の開発でなかったことを明らかにした。

以上の弁護側の反論によって、検察は、事件の動機について本蔵と村田製作所の共謀の作り話の立証に失敗した。今後は、検察が事件の動機をどのように組み立て直すのか?おそらく愛知製鋼のMI技術を不正利用して特許出願し、不正な利益を図ろうとしていたとの主張に変更せざるをえなくなったと思われる。


10/1、10/30、11/19の3回の本蔵氏の証言

1.本蔵氏の証言要旨

証拠写真は愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密を開示したものではなくて、本蔵氏の無罪を証明する証拠である。写真は、マグネ社の新設備の構想図であり、マグネ社の営業秘密に相当する。検察が犯行と主張する開示工程情報は、架空の工程であり、秘密漏洩事件そのものが事実無根である。

2.具体的主張

1) 裁判は、検察が提示した証拠写真(X)の記載内容が、愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密かどうかをめぐって争われている。現場にいた証人は本蔵、菊池および松永(設備業者)の3名からなるので、その3名の証言が重要である。

2) 松永証人は、当然愛知製鋼のワイヤ整列装置について何も知らなったことを前提に、2/18に写真に記載されている情報を丁寧に説明し、その場で討論されたことは、新設備の要望仕様を聞いただけで、本蔵氏から設備の構造や工程の説明は受けておらず、ワイヤ整列装置の設計・製作は自社技術(愛知製鋼からの技術提供は無い)で行うことで合意した旨を証言した。今回、本蔵氏は、写真に記載されているすべての情報を丁寧に説明し、松永氏の証言とほぼ同じ事実内容を確認した。そして、写真は松永氏に新設備仕様を要望し、その実現方策を議論し、マグネ社の新設備仕様を決定した会議で、写真は愛知製鋼の装置とは異なる装置であることを証言した。

両ワイヤ整列装置の違いは、愛知製鋼のそれは、最初にワイヤを張力熱処理(500℃)し、MI特性を与えた上で、張力を極力変えないように弾性限界以下として、ワイヤを張力フリーで切断して磁石を使って基板に張り付けてMI素子の製作を可能にする装置である。他方マグネ社のそれは、ワイヤを弾性限界以上の大きな張力で引き出して、その状態で両面テープを使って基板に張り付けて切断し、その後その張力を活用して張力熱処理(300℃)によりワイヤにGSR特性を付与してGSR素子の製作を可能にする装置である。

さらに、GSR素子はMI素子に比べて、微小な溝にワイヤを高い精度で整列させる必要があり、整列精度を±10μmから±1μmとより高い精度を実現できるもので、それは新発想の整列方式で実現した装置である。

以上、負荷張力と整列精度の違いから、両者の装置の構造と工程は、大幅に異なったものになっていることを明らかにした。なお愛知製鋼の装置の基本構造は、愛知製鋼特許(特開2019-35743)に詳細に記載されており、両装置の違いは裁判の中で明白になっている。

3) 証拠写真とマグネ社の新設備との関連について、本蔵氏は、事件前に作成した新設備仕様に関するメモを証拠として提出し、新設備は、ワイヤ整列装置の基本設計(A)に関する公知情報をベースに、新機能(B)を付け加えたものであるとのメモと証拠写真の記載内容が一致していることを立証した。

基本設計(A)に関する情報は、本蔵氏が99年にワイヤを切断後、基板に張り付ける大学版素子の製作法に代えて、ワイヤをボビンから引き出して基板に張り付けてから切断し、それを連続的に繰り返する量産仕様素子を製造する基本技術を考案して、その技術を国際会議、JST開発委託報告書およびJST主催の公開セミナで公表していたもので、公開情報であることを立証した。

新設備が有する新機能(B)は、弾性限界(40kg/mm2)よりも小さな張力を負荷する愛知製鋼の装置に代えて、新設備は弾性限界以上の大きな張力(76kg/mm2)を負荷することができる機能を有している。そのため、新設備は愛知製鋼のそれとは、装置の工程の基本設計の点、つまり、ワイヤの搬送方法、張力負荷方法、切断方法など全工程で異なることを立証した。

4) 証拠写真と愛知製鋼の設備との関連について、本蔵氏は、愛知製鋼の秘密情報(=秘密のノウハウ(C)は、西畑氏の証言および愛知製鋼特許を使って特定することができるが、愛知製鋼の秘密情報(C)は証拠写真には記載されていないことを確認した。つまり、証拠写真は、秘密開示犯行が無かったことを物語る証拠である旨主張した。また愛知製鋼の装置の秘密の核心である磁石式治具について、証拠写真には記載がないことを確認した。さらに磁石応用や多極着磁構造を利用すること自体は一般的であり、しかもその技術は微細ワイヤの仮止めに応用されていることは公知情報でおり、愛知製鋼の秘密とは言えないことが明らかになった。もちろん詳細な磁石治具の設計図面などは秘密であるが、証拠写真には図面は開示されていない。

検察は、西畑証人の証人主尋問で、愛知製鋼の装置は西畑氏が一からすべてを開発したもので、したがって装置に関する情報は愛知製鋼以外に公知情報は無いと主張し、証拠写真はワイヤ整列装置を示している以上アイチの秘密(C)の開示であると主張し、西畑証人がその旨を証言した。しかし、今回本蔵氏は、西畑証人は設計アイデアそのものに関与していない単なる実務担当者の立場であったこと、しかもリコー㈱やJST(日本科学技術機構)との契約に関与しておらず、秘密情報開示に関する取り決めを証言できる立場にないこと、さらには証拠写真に記載されている技術的意味の判定に必要な電磁理論に精通していないことを主張した。西畑証人は、(C)を立証するにふさわしい証人ではない旨を指摘した。

5) 検察は、本蔵氏による開示情報(=装置の工程①から⑦の一連の動作(D))を犯行として特定した。しかし、開示情報①から⑦の各工程はいずれも愛知製鋼の実際の工程とは違っており、その結果愛知製鋼の設備を稼働させることができない工程であること、しかも西畑氏までもが、同様の証言をした。

検察が特定した開示情報は、マグネ社の特許装置の工程(E)と酷似しており、マグネ社の特許の工程を模して作文した工程である。つまり開示情報(D)=マグネ社の特許の工程(E)である。検察は、愛知製鋼の主張、つまり「本蔵装置特許(E)=愛知製鋼の装置(C)」との主張をうのみにしており、本蔵氏の開示情報(D)=本蔵装置特許の工程(E)=愛知製鋼の装置の工程(C)、つまり(E)=(C)となって、本蔵氏が秘密漏洩したことが証明できたという立場と考えられる。現時点では、「本蔵装置特許(E)≠愛知製鋼の装置(C)」。両者は異なる装置であることは明らかになっており、上記立証は破綻している。検察は、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を直接立証すべきである。

愛知製鋼は、告訴にあたり、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を立証した技術鑑定書を作成しており、検察はそれを使って事件を立証すべきである。

6) 愛知製鋼が刑事告訴に至った端緒は、愛知製鋼が、13年8月にマグネ社の開発計画書(JST補助金申請書に記載した秘密書類)を不正に入手して、マグネ社の開発を自らの事業のリスクと判断し、マグネ社対策を決定している。そこでマグネ社の未公表特許に対して、愛知製鋼の社内技術の延長線上のもので、特許は愛知製鋼の職務発明に帰属すると独断し、訴訟を準備したり、および本蔵氏を監視する体制を整えたりしていたとの証拠が明らかになった。愛知製鋼は、本蔵氏の退職後の開発は、愛知製鋼時代の延長で、愛知製鋼に帰属すべきものとの考えに立っており、その立場に立って、本蔵氏が開発した装置についても、機械的に愛知製鋼に帰属する装置と主張していることが明らかになった。本告訴の動機が、秘密漏洩の被害にあったからか、それともマグネ社の躍進を妨害するためだったのか、疑われる事態となっていると感じた。

7) 逮捕事件後もマグネ社は開発を継続し、新設備の新機能を使って、GSRセンサ原理を発見し、NHK報道、国際会議発表や、国際的な学術誌への論文掲載と注目を集めている。証拠写真の情報とその後のマグネ社の開発との対応を説明して、証拠写真の情報は、GSRセンサ原理の発見へとつながったマグネ社の秘密であったことを明らかにした。