2月17日、刑事裁判記者説明会を開催
22年2月21日 NEWS
3月18日裁判判決を前に、本裁判について、マスコミ関係者からの関心が高まっています。弁護団は、マスコミ関係者からの事件の背景と論点および判決の見通しなどに関する質問に対し、説明会およびマグネデザイン見学会を開催しました。
新聞社およびテレビ局10社にご参加頂き、説明会後、裁判は無罪になりそうだとの感触を持たれた方もおられました。
当日使用した、説明資料をホームページで紹介します。
事件の技術背景について説明の要旨は以下の通りです。
(1)愛知製鋼の主張は、
① マグネ社のGSRセンサはMIセンサの模造品で、MIセンサ技術を盗用して試作したセンサである。本来ならば、本蔵氏のGSRセンサ特許はアイチに帰属すべきものである。(毛利意見書、この意見が本事件の根源である)
② マグネ社の磁気ジャイロ特許、3軸素子デザイン特許、電子回路特許、ワイヤ整列装置特許、ワイヤ熱処理特許、以上5件の特許は、すべて愛知製鋼の発明品を盗用して、勝手に特許出願したものである。(第一次刑事告訴状、“青山”特許査定書2件)
③ GSR素子は、MI素子の製造技術を記載したQC工程表をサーバから盗み出して試作したものである。(第一次刑事告訴状)
④ 製造技術のコア技術である磁石式治具と図面を持ち出して、コピー品を製作した。(第一次刑事告訴状)
⑤ マグネ社のワイヤ整列装置の機能と構造は、愛知製鋼の装置と同一である。本蔵氏はホワイトボード(以下WB)を使って、それをF社に開示して装置を製作させた。(第二次刑事告訴状、3件のWB鑑定書)
⑥ 本蔵氏は愛知製鋼の装置内工程をF社に開示して、装置を製作させた。(第1回公判検察の冒頭陳述=愛知製鋼主張と考えるべきもの)
つまり、GSRセンサはMIセンサと同じものであり、それは愛知製鋼のプロセス技術、装置、治具を盗用して製造したものであるとの主張が、今回の事件の端緒となった。
(2)対して、マグネ社側の主張は、
① GSRセンサは基本発明であり、MIセンサとは異なる技術である。この技術はGSR特許無効裁判の審決および著名な国際学術誌で公認されている見解である。審決がGSR特許の進歩性を認めたことについて、愛知製鋼自身もすでに認めている事実である。学術誌が公認している件についても、愛知製鋼は反論すらしていない。(GSR特許無効審判の審決、Sensors誌やJMMM誌のGSRセンサ学術論文)
② 5件の特許については、第一次刑事告訴の取り調べで、全て説明し不起訴になった。その処分について、愛知製鋼は抗議していないし、特許無効審判も申し立てていない。愛知製鋼の告訴には理由が無かったということで決着済みである。
③ GSR素子とMI素子の製造技術は同じであるとの見解だが、GSR素子の製造技術は、半導体プロセスとメッキ工程との違いがあり、この新技術では10倍も微細な素子コイルができる。この新技術は名古屋大学が考案したもので、文部科学省のナノテクプラットホーム事業の6大発明賞を受賞した技術であり、愛知製鋼の告訴には理由が無いと、第一次刑事告訴の取り調べで、説明し不起訴になった。その処分について、愛知製鋼は抗議しておらず決着済みである。
④ 磁石式治具について、愛知製鋼製は、多極着磁磁石の磁力でワイヤを溝に引き込み、切断後は張力を無くして仮止めし、MI特性を確保するものであるが、マグネ社製は、ワイヤを両面テープに押し当てて仮止めし、大きな張力を残存させながら、張力熱処理を行ってGSR特性を付与するものである。ワイヤの仮止めの仕方と目的が真逆の治具であり、愛知製鋼の告訴には理由が無いことを明らかにし、第一次刑事告訴の取り調べの結果不起訴になった。
なお、本件は民事裁判で、菊池氏が持ち出した事件として係争中である。菊池氏は公判の中で、F社との取引は浅野常務らに報告した業務上の行為であったことを証拠で示した。対して検察は反論すらしなかったことを指摘しておきたい。
⑤ マグネ社のワイヤ整列装置と愛知製鋼の装置とは、共通部は公開情報で、相違点は両者の目的の違い、つまりGSR素子は弾性限界以上の大きな張力の仕様かMI素子は弾性限界以下の張力を極力かけない仕様かの違いに起因するものである。装置の機能を左右する重大な相違点があり別技術である。検察は、第二次刑事告訴の第1回公判でこの主張を放棄しており、理由がなかったことは明白である。
特許的には両者は別個な特許技術として成立している。愛知製鋼も別技術と認識しており、両者は同じだという告訴は理由のないものであった。愛知製鋼は特許無効裁判の申し立てを前提に、マグネ社が特許権の使用を禁止する仮処分決定を裁判所から受けていたが、その後この申立てを自ら取り下げており、理由のない告訴であることは告白している。(愛知製鋼の供託金1億円は現在裁判所で塩漬けとなっている)
⑥ 検察が秘密開示したという検察工程は、検察が作文した架空工程である。検察工程は、ワイヤ基準線の位置決め方式を開示したとなっているが、WBの図には、2個のリール位置決め方式が記載されており、両者は真逆の工程で、WB記載の情報と対応していない。また、愛知製鋼の西畑証人は、検察工程では愛知製鋼の装置は稼働できないと証言しており、この証言は愛知製鋼の秘密とも対応していない。それは、マグネ社の特許の工程を参考にして、作文した工程である。その証拠に「ワイヤ基準線の位置決め方式(基板側を移動させて調整)」は、事件1年後に本蔵氏が考案したアイデアであり技術用語である。それは検察工程に含まれるはずがないものである。さらに、愛知製鋼は、先端ガイド位置決め式(ワイヤを移動させて調整)を採用しており、両者は真逆の考えの技術である。
架空工程である検察工程は論外として、西畑証人による愛知製鋼の装置の秘密工程(西畑工程)とマグネ社のそれとを比較すると、愛知製鋼のそれは、公開情報をベースにMI素子の量産を可能にする工程で、数多くの細部ノウハウ、つまりワイヤをゆるゆるに張って取り扱い、MI特性を発現させるノウハウを含んだものである。一方、マグネ社のそれは、公開情報をベースにワイヤをピーンと張って、GSR特性を実現するためのノウハウからなっているものである。両者の装置の工程は大きく異なっている。
愛知製鋼の青山証人は、公開情報工程と磁石治具を組み合わせただけの基本工程が愛知製鋼の秘密工程だ。西畑氏の証言した数多くの細部ノウハウ秘密は些細なことだ。公開情報は接着剤を使用しており、磁石を使用して仮止めするので相違すると主張した。しかし、技術比較の均等論によれば、ワイヤを固定する機能の点では接着剤と磁石は同じで代替可能であり、両技術は同じと見なされる以上、青山証人は、愛知製鋼の工程には秘密はないと証言したに等しい。これは、西畑工程は、基本工程は当たり前で、細部ノウハウが秘密。青山工程は基本工程が秘密で細部ノウハウは些細なことだ。と両者は真逆の考えの意見であり、愛知製鋼が開示されたと称する秘密工程が証人によって異なり、特定されていないことが明らかになっている。本来ならこの時点で公訴は棄却されるべきものである。
以上、愛知製鋼の主張には理由が無いことを説明した。GSRセンサがMIセンサと原理的に異なる技術である以上、GSR素子の製造方法や製造装置が愛知製鋼のMI素子のそれと異なるのは当然のことである。GSRセンサとMIセンサは同じだ。だから製造技術や装置情報を盗用したという愛知製鋼の主張は、裁判の過程でことごとく否定されている。
(3)愛知製鋼が根拠とした技術鑑定書について
愛知製鋼は告訴にあたり、6件の技術鑑定書を作成し検察に提出した。
(GSRセンサ原理に関する毛利意見書、特許に関する2件の青山特許鑑定書、3件のWB鑑定書)
すべての鑑定書は、不起訴対象となったり、検察に採用されなかったりしており、理由が無いものであることが明らかになっている。特に3件のWB鑑定書は、検察は愛知製鋼から受け取ったにも関わらず、裁判に採用していない。さらに、愛知製鋼の工程については、愛知製鋼が特定した工程を採用せずに、それと異なる検察愛知製鋼工程なるものを作文して犯罪立証に使用しており、杜撰な技術鑑定書に基づく刑事裁判は許されるべきものではない。
*次回、井上弁護士の裁判説明を掲載する予定です。
参考資料:説明資料(PDF)
参考資料の解説
資料1)GSR原理とMI原理の違いを説明した資料。87年TDK特許で磁気を検出するセンサ構造は確立されたが、励磁パルスの周波数が、KHz(TDK特許)⇒MHz(MIセンサ)⇒GHz(GSRセンサ)と増加し、特性の改善が図られてきた。GSRセンサは、MIセンサの3つの欠点を、GHzパルスと表面磁区のスピン回転に着目して解決したセンサである。
資料2)GSRセンサは、国際的学術誌SensorsやJMMMに掲載されて国際的評価を勝ち取っている。大反響と言える。
資料3)MI素子とGSR素子の違いを説明した資料。大学発の素子から愛知製鋼のMI素子、それを100倍も微細化したGSR素子を示して、GSR素子は、半導体製造プロセスとASIC面に直接成形するプロセスの開発によって実現したことを示した。
資料4)ワイヤ整列装置の技術進歩の経緯を示した資料。公開情報をベースに、愛知製鋼はMI素子を製作する仕様の装置、マグネ社の装置はGSR素子を製作する仕様の装置で、双方特許が成立しているように、両装置は技術思想レベルから異なる。
資料5)愛知製鋼の治具とマグネ社の治具を比較した資料。愛知製鋼は、磁力でワイヤの張力ゼロで固定し、マグネ社は両面テープで大きな張力で固定、後で張力熱処理を実施することを可能にした治具で、構造と機能が異なっている。
資料6)愛知製鋼が提出した技術鑑定書を評価した資料。愛知製鋼は6件の鑑定書を提出したが、すべて却下されており、告訴は理由のないものであったことは明らかである。
資料7)GSRセンサを紹介した資料。1mm×1mm程度の大きさのセンサでnTレベルの微小磁界の測定が可能である。

