井上弁護士 刑事弁護ニュースで愛知製鋼刑事裁判を解説
22年12月16日 News
井上弁護士は、判決は、問題となった営業秘密(装置の工程)について、検察が起訴した本件工程A、愛知製鋼の真の工程B、本蔵氏が開示した工程Cの3つを特定し、三者が基本的な点で異なり別物であることを指摘した。その上で、検察が、工程を抽象的な表現をして共通なものだと主張したことに対して、そのような共通性は一般情報となり営業秘密ということに無理があると退けている。その旨を紹介した上で、本裁判が提起した営業秘密の刑事的保護について問題提起を行っている。
第1は、加害企業が被害者を装って、技術的知見に乏しい捜査機関を利用して、無実の研究者を逮捕させるという不正義が起り得るという点である。これを防ぐためには告訴人に第三者の技術的鑑定書を添付させる必要がある。
第2は、加害企業が被害者を装うことによって公判記録を謄写して他社の秘密情報を入手できるという問題である。このような不正競争防止法の悪用についての何らかの法的歯止めが必要である。
当社の見解として、今回の刑事裁判事件において、愛知製鋼は被害者を装うことによって、マグネデザイン社の営業秘密を入手すると同時に、社長逮捕による営業妨害を行うという目的を達成したと考えております。このような不正義に対して、当社は、本年5月10日愛知製鋼の藤岡社長以下3名を虚偽告訴しました。本事件は現在名古屋地方検察庁特別捜査部で捜査中です。
添付資料:井上弁護士の刑事弁護ニュース記事
井上弁護士が東京弁護士会の知財法研究会で“愛知製鋼による営業秘密刑事事件”について特別講演をしました
22年9月26日 News
以下、井上弁護士から報告です。
弁護士の井上健人です。
9月21日、第二東京弁護士会知的財産権法研究会にて、「営業秘密の刑事事件の実務―愛知製鋼裁判の経緯と裁判が提起した問題―」と題する講演をさせていただきました。講演内容の概要は、添付の資料のとおりです。
私から、3月18日に無罪が言い渡された裁判について、検察官や弁護人の主張立証活動といった裁判の内容を報告し、最後に、この度の刑事裁判が提起した営業秘密の刑事的保護の問題点を指摘しました。
会場からは、多くの質問や意見が寄せられ、大変有意義な講演会となりました。とりわけ、弁理士や、弁護士の中でも知的財産権法の分野に力を入れて取り組まれている研究会のメンバーの方々から、今回の検察官による営業秘密の主張の仕方があまりにも「無理筋」であるように思うという声が多数聞かれたことは、本藏氏・菊池氏、さらには、私ども弁護人の認識が真っ当なものであったと、改めて自信を深めることができました。
今回の刑事裁判では本藏氏や菊池氏の無実が証明されたわけですが、愛知製鋼は、現在も本藏氏らを被告として民事訴訟を続け、無罪刑事判決の出た裁判で問題となった情報と同じ情報を「営業秘密」だと主張しています。この民事訴訟において、愛知製鋼は、刑事裁判で「被害者」だということを理由に取得した裁判の証拠を多数利用しています。その反面、本藏氏側は、刑事無罪判決から言わせれば「無理がある」方法によって起訴され、無実を勝ち取ったにもかかわらず、民事訴訟においては、刑事訴訟法第281条の3及び4の開示証拠の目的外使用の禁止という規定を理由に、刑事裁判の証拠を自由に用いることはできないでいます。真実「被害者ではなかった」者が刑事裁判の証拠を自由に利用でき、全く謂れのない起訴によってむしろ被害を被った者が刑事裁判の証拠を自由に使えない。講演の中では、こうした明らかな不正義についても訴えたところ、不正競争防止法の改正等に携わられている弁護士の方からは、この深刻な問題について理解をいただき、検討するとのお言葉をいただきました。
最後に、会場からの感想として、「今回のような裁判が起きるようでは、日本ではベンチャー企業は育たないだろう。」というご意見も聞かれました。全く同感です。大企業が、新たな研究開発に果敢に挑むベンチャー企業の挑戦を妨害するようなことが繰り返されるようでは、この国の産業の衰退は必至です。今回の無罪判決が、より良い不正競争防止法の在り方、法の濫用ではなくより正しい不正競争防止法の利用につながっていくことを、一人の法律家として期待してやみません。
添付資料:第二東京弁護士講演会_プレゼンテーション資料
添付資料:起訴状の公訴事実の内容
添付資料:過去の裁判判例一覧
添付資料:特許公報
添付資料:公開特許公報
藤岡氏、無罪判決に反省なし。再度謝罪と名誉回復の要求を拒否し、不当な裁判の継続を表明
22年9月22日 News
8月22日、藤岡氏の株主総会での開き直りと引き続く裁判攻撃による業務妨害に対して、謝罪要求を申し入れました。9月20日に回答があり、そこには無罪判決が出された秘密漏洩事件が全くの作り話であったことの謝罪や反省の弁は全くなく、むしろ、この判決を意図的に曲解して被害者は愛知製鋼であるかのような態度を維持し、マグネデザイン(以下「当社」といいます。)が行った虚偽告訴と120億円の損害賠償は不当な行為だと批判をしてきました。
確定した判決は、愛知製鋼が開示されたという秘密は、愛知製鋼が保有する秘密とは異なると、重大な指摘を行っており、秘密開示事件が虚偽であったことが指摘されています。その上で、起訴に無理があったと判決しています。愛知製鋼は、厳しく叱責されたにも関わらず、判決は間違いで、被害者は愛知製鋼であると主張をし続けています。
当社は、事件の真相(愛知製鋼がGSR技術とベンチャー企業の乗っ取りを企んで裁判攻撃をした事実、被害者は当社であった事実)を明らかにする為に、藤岡氏らを虚偽告訴罪で刑事告訴すると同時に、120億円の損害賠償を請求しました。反省を拒否する藤岡氏らの不正を質すために、これらの裁判を通じて、愛知製鋼の刑事責任を追及する事にしました。
添付資料:マグネデザイン_謝罪要求書
添付資料:愛知製鋼_回答書
無罪確定にも拘わらず、愛知製鋼は株主総会で反省なし。改めて謝罪要求する
22年8月24日 NEWS
無罪判決が確定して4カ月が経ちましたが、愛知製鋼社長の藤岡氏らは弊社への謝罪を拒否した上で、6月22日の同社株主総会で、“本蔵らによるMI技術の盗み出し事件は事実であり、「対応は正当」だった”と判決を認めず、「係争中の裁判で当社の考えを伝えたい」と、引き続き弊社への裁判攻撃を続けることを表明し、以下の3件で裁判攻撃を強めています。
1)本蔵と弊社の預貯金や財産や株式の仮差押えの裁判の継続
2)15億円の損害賠償請求裁判の継続
3)愛知製鋼の請求が退けられたGSR特許無効審判(記載要件の不備)の審決の取消訴訟の継続。(GSR特許無効裁判におけるGSRセンサの進歩性が問題となった審決は、愛知製鋼が不服申立てをしなかったことで確定しており、同社も審決の正しさを認めています。)
私は、改めて、藤岡氏に対し、直ちに不毛な裁判攻撃を中止して、理由のない裁判事件を起こした点について、社内で真相究明調査を始めると同時に、弊社に謝罪して、話し合い解決の立場に立つことを要求します。
弊社は、愛知製鋼からの新たな裁判攻撃に対して防衛的に対応すると同時に、裁判の結果明らかになった事件の真相、つまり愛知製鋼が、 “MIセンサと称してGSRセンサ模造品を開発”するためにGSR技術とベンチャー企業の乗っ取りを企んだという、この不正義を批判するために、
1) 藤岡氏らを5月10日虚偽告訴罪で刑事告訴しました。
2) 5月16日120億円の損害賠償請求訴訟を提起しました。
愛知製鋼は確定した無罪判決を認めず、架空の秘密漏洩事件に固執して、事件の真相(大企業によるベンチャー企業の乗っ取り)を覆い隠して、自らの不正義な行いを正当化しようとしています。弊社は、再度謝罪要求の手紙を出し藤岡氏らに反省を促しました。
添付資料:謝罪請求の手紙
名古屋地検特捜部、愛知製鋼株式会社関係者(藤岡社長ら)に対する刑事告訴を受理。虚偽告訴の真相が解明されることを期待。
22年5月27日 NEWS
本藏らの刑事裁判について、本年4月2日に無罪判決が確定したことを受けて、5月10日、本蔵らは、名古屋地検に、愛知製鋼関係者を刑事告訴しました。本日、検察庁に確認したところ、本日付で名古屋地検特捜部が上記告訴を受理したとのことでした。
藤岡氏は、本蔵からの謝罪要求に対して、拒否するばかりか、逆に被害者は自分だとしてマグネデザインらに対する損害賠償裁判を取り下げず、さらにGSRセンサ原理特許の無効審判についても不服申立ての訴訟を提訴するなど、刑事裁判の無罪判決を認めようとしていません。
名古屋地検特捜部が、藤岡氏らの嫌疑について十分な捜査を尽くし、虚偽告訴に至った背景も含めて、事件の全容が解明されることを強く期待します。
愛知製鋼の藤岡社長らを虚偽告訴罪で告訴
近日中に120億円の損害賠償請求裁判を申し立てる予定
22年5月12日 NEWS
無罪判決が確定後、マグネデザイン(以下「当社」といいます。)代表取締役本蔵から愛知製鋼株式会社代表取締役社長藤岡氏に対し、謝罪を要求し続けていましたが、拒否されました。それどころか、同氏は、上記の無罪判決の判示を認めず、「本蔵らによる秘密開示事件の被害者は愛知製鋼だ」と主張し、民事裁判(損害賠償裁判、全財産の仮差押さえ攻撃、特許無効審判)で白黒をつけると、当社の攻撃をエスカレートしています。
そこでやむなく、愛知製鋼からの裁判攻撃から本蔵らの名誉を守るために、藤岡氏らを虚偽告訴罪で告訴することにしました。さらに、彼らの虚偽告訴によって、当社は、16年当時立案した上場計画がとん挫し、200億円相当の甚大な損害を受けています。その損害について120億円の損害賠償訴訟を申し立てえる準備をしています。
今回の事件は、大企業によるベンチャー企業の革新的技術の乗っ取り事件であり、このような虚偽告訴が、大企業によるベンチャー企業乗っ取り手法として横行する事態になってはなりません。そのような事態を阻止するために、検察による厳正なる処罰を要望します。
さらに、藤岡社長らが 虚偽告訴を行った事実を認め、社内に真相解明調査会を設立し、自浄作用を発揮することを期待しています。
虚偽告訴罪の告訴要旨
1) 藤岡氏らよる虚偽告訴の経緯
無罪判決は、本件起訴(=告訴内容と同じ)には無理があると厳しく批判した。
事件の端緒は、13年8月青山氏が当社の補助金申請書を不正入手し、その資料からライバル企業に成長するとの危機感を抱き、当社潰しの作戦書を作成した。全社的なリスク管理組織を結成し、本蔵らの開発は愛知製鋼の秘密を盗んで行っているとして、告訴を準備するというものであった。
16年1月当社がGSRセンサ原理特許を取得し、NHK報道で紹介およびNEDOとベンチャーキャピタルからの資金提供など急速な成長が予想される事態に及んで、愛知製鋼は、刑事告訴、損害賠償裁判、仮差押え、特許無効審判などの裁判攻勢でもって、当社の乗っ取りを企んだ。
2) 虚偽告訴の事実
5年 間の裁判の過程で愛知製鋼の告訴が虚偽であったことが明らかになった。
裁判は、愛知製鋼の営業秘密が特定されず、混迷したが、愛知製鋼のワイヤ挿入装置開発者でその営業秘密を最も理解している西畑氏の証言や同人を発明者とする特許等によって、彼が当業者の当たり前の技術を理解していたこと、および、当社と愛知製鋼の両装置は異なる点があり、その異なる点が、愛知製鋼のノウハウであること、および本蔵特許のワイヤ基準線方式は採用していないことを明らかにした。その上で、ホワイトボードには愛知製鋼のノウハウは記載されていないことを証言した。
青山氏は、これらの事実を西畑氏からの報告を受けて、認識していたにもかかわらず、本蔵特許は愛知製鋼の秘密を盗んで出願されたものだと主張するために、本蔵特許と愛知製鋼の装置の両者は明白に異なる技術であるにもかかわらず、ワイヤ基準線方式を愛知製鋼が以前から採用していたと嘘をつくなどして、事実を捻じ曲げて、同一だとの虚偽の鑑定書を作成した。この鑑定書を平たく言えば、ワイヤ整列装置である限り愛知製鋼の秘密だと主張する暴論である。鑑定書の作成者から西畑氏は排除されているが、その理由は、青山氏の証言、つまりこの鑑定書は自己の裁量で作成した部分があるとの証言からすると、西畑氏の賛同を得ていないと考えられる。この虚偽結論を基礎に、ホワイトボードに記載されているワイヤ整列装置は、愛知製鋼の営業秘密であるとの虚偽の事実を創作した。藤岡氏と浅野氏は、この事実を認識した上で、虚偽告訴を行った。
この告訴に対して、判決は、「本蔵氏らが開示した情報は、愛知製鋼の工程と大きく異なる部分がある」「両者の工程が同じとなるように愛知製鋼が工夫した部分をそぎ落とした工程は、抽象的・一般的で、愛知製鋼の秘密とは言えない」と結論づけて、無罪と判断したものある。この判決からもわかるように、愛知製鋼の告訴は、愛知製鋼のノウハウとは違う情報を愛知製鋼の営業秘密と偽って告訴した虚偽告訴であることは明白である。
3)被告らの故意性
青山氏は、西畑氏が特定した愛知製鋼の秘密と真逆の秘密を主張した。西畑氏は本蔵特許と共通点は当たり前の情報であり、異なる点が愛知製鋼のノウハウと証言したが、青山氏は、異なる点は些細な点で重要でない、共通点が愛知製鋼の秘密だと証言した。なお、共通点は公開情報であることを知りながら、裁判関係者にはばれないだろうと嘘をついたものである。また、本蔵特許にあるワイヤ基準線方式は愛知製鋼の秘密であるとの嘘の証言をした。
藤岡氏と浅野氏が、虚偽であることを理解していたことは、秘密鑑定書に、愛知製鋼のノウハウを知る西畑氏を関与させなかったこと、裁判において、検察官に愛知製鋼が保有する工程情報およびそれを記載した西畑特許を提出しなかったことなどから、両名が確定的な故意を有していたことが分かる。
しかも両名は、青山氏の鑑定書の真偽の調査、および西畑特許の内容、既存メーカの公開情報を知る立場にありながら、怠っている点や、ホワイトボードの記載内容のどの点が営業秘密に該当するのかを確認していない等、極めて軽率に告訴に及んでおり、未必の故意は明白である。
4)虚偽告訴の背景
本蔵は、12年6月専務退任後、15年GSRセンサ原理を発見した。愛知製鋼は当社が、GSRセンサを通じてライバル企業に成長することを恐れて、その乗っ取りを図り、今回の虚偽告訴を決断した。告訴状の中で、その内容を詳細に説明した。
無罪確定後も、愛知製鋼の藤岡社長、謝罪も話し合いも拒否。
22年4月28日 NEWS
4月4日の無罪判決確定を受けて、4月11日、再度、本藏から藤岡氏に謝罪要求をしました。藤岡氏からは、「見解の相違は、裁判において解決すべきもの。今後書面に対して返答をしない。」「貴殿が事実認識を改め・・真摯に解決を望め」と信じられない回答が来ました。
無罪判決は、愛知製鋼の告訴には理由が無く、起訴に無理があったと指摘しています。今回の回答によって、藤岡氏が、無罪判決という司法判断を尊重する意思が全くないということだけでなく、偽の営業秘密を創作し、あたかも秘密盗用事件があったかのような虚偽の告訴をして、捜査機関を利用して、本蔵・菊池の両名を逮捕起訴せしめ、重大な人権侵害を行ったことについて、まったく反省をしていないことがはっきりしました。
愛知製鋼のOBとして、できるだけ穏便に事後処理をしたいと努力してきましたが、藤岡氏の態度を見る限り、彼を反省させるには司法の場で責任を追及するしかないと判断し、しかるべき対応を取ることにします。
無罪判決確定。それでも藤岡社長(愛知製鋼㈱)謝罪要求を拒否。改めて謝罪を要求
22年4月14日 NEWS
刑事裁判の無罪判決(3月18日)の結果を踏まえて、3月22日愛知製鋼の藤岡社長に対して、①謝罪要求と②話し合いを提案しました。しかし、無罪判決が確定した4月4日、愛知製鋼から回答がありました。驚くべき内容で、無罪判決を曲解し謝罪するのはマグネデザインの側だと暗に主張するものでした。
弊社は、藤岡氏が、代表取締役社長として、必要な事実関係を精査せず、青山氏や浅野氏の技術鑑定をうのみにして、正当な理由もなしに刑事告訴したことは、虚偽告訴に相当するもので、謝罪して当然だと考えています。
以下、回答に対する当方のコメントです。
1)謝罪要求に対して、正当な裁判権の行使であり、またマグネデザインの事実認識は誤っているので、謝罪する理由はないとの回答でした。無罪判決は愛知製鋼の事実認識が間違っていると判断したものですが、それを認めないとの回答には驚くほかありません。
2)1号機ないし3号機が、愛知製鋼の営業秘密であると主張し、判決が、秘密を認めていないかのような主張をしています。判決では、その秘密を認めた上で、本蔵らがその秘密を開示してない。起訴に無理があったと結論付けています。
3)判決の一部表現を曲解して、秘密開示事件があったと認定されたかのように主張し、事件の捏造を隠そうとしています。判決は、もし本件開示情報が愛知製鋼の秘密に該当するという(検察側の)見解を採るのであれば、一連の事実経過が全く別の意味を持つことになり、菊池氏の公判供述は「到底信用できない」とか、「不正の利益を得る目的」を認定できると指摘しています。しかし判決は、そのような見解を採らない(=犯罪の証明がされていない)ので、検察側の主張を認めたとしても無罪だと結論付けています。犯罪が無い以上、一連の経過事実は、むしろ弁護団の主張に沿ったものとなると思いますが、判決ではあえてその判断はしていません。弁護団は、一連の事実関係についての弁護団の主張は、無罪判決に影響するものではないので、その真偽の判断を避けたと考えています。
4)両名が共謀して、磁石治具をF社に不正開示した秘密開示事件はあったと主張し、民亊の損害賠償裁判で逆転を狙うことを表明しています。しかし、本事件は不起訴(嫌疑不十分)になっており、本蔵とマグネデザインは、愛知製鋼の磁石治具を必要としていなかったことが明らかになっています。また菊池が開示した目的は、マグネデザインのためでなくて、愛知製鋼の業務の一環で正当な開示であったことはすでに公判で明らかになっています。勝つ見込みはないが、裁判を長引かせて、マグネデザインの開発業務を妨害しようとしているとしか考えられません。
5)1号機ないし3号機の愛知製鋼の営業秘密をマグネデザインが特許として出願したと、両名を重大犯罪者であるかのように非難をしてますが、本件は愛知製鋼が特許裁判(注1)や刑事裁判(注2)を提起しておきながら、いざ裁判になると自らが主張を取り下げたことによって決着が着いているはずです。
(注1)愛知製鋼は、自らに帰属すべき特許だと告訴しておきながら、自ら取り下げた。
(注2)刑事告訴で、愛知製鋼は、本蔵らの特許出願の不正行為を発見したことが事件の端緒だと主張し、それの事件の核心部だと言いながら、実際の裁判では争わないと主張した。
以上、愛知製鋼の回答は、無罪判決が確定したにもかかわらず、それを全面否定する見解でした。
当方としては、引き続き、今回の無罪判決を真摯に受け止めて、まず謝罪をすることと、未来志向で両者が協力するための話し合いに応じることを要求します。
無罪判決確定に対する愛知製鋼のコメントについて
22年4月7日 NEWS
愛知製鋼は、4月4日無罪判決確定に対して、挑戦的ともいえるコメント “不正競争防止法関連事案への今後の対応について“ を発表した。
判決は、「本蔵氏らが開示した情報は、愛知製鋼の工程と大きく異なる部分がある」「両者の工程が同じとなるように愛知製鋼が工夫した部分をそぎ落とした工程は、抽象的・一般的で、愛知製鋼の秘密とは言えない」と結論づけて、無罪と判断したものある。
この判決に対して、愛知製鋼は「厳粛に受け止め、今後の対応を検討」と述べているが、その一方で、「一見何気ないノウハウも・・価値ある財産である。」と述べて、抽象的すぎる工程は秘密に当たらないとの判決に敵意を示している。さらに「今後も重要な技術の流出防止を図る」と述べており、あくまでも秘密が流出されたという立場に固執し、とても判決を厳粛に受け止めたとは思えない、むしろ判決を認めない姿勢を表明している。
実際の同社の行動を見ても、同社は、今回の刑事裁判で、秘密不正開示事件の存在が否定されたにも関わらず、民事上の損害賠償裁判で秘密不正開示事件があったとの主張をし続け、紛争の蒸し返しを図ろうとしている。また敗訴したGSRセンサ特許無効審判の審決の取り消し裁判を申立て、当社に応訴を強要し開発妨害を強めている。
弁護団は、公判において、愛知製鋼の告訴は、理由は無くて虚偽であること、その狙いがGSR技術の乗っ取りであることを指摘してきたが、この指摘と無罪判決確定後も続く愛知製鋼の異常な攻撃的態度とが関連していると思われる。
当社は、愛知製鋼に対して、不毛な民亊裁判・特許裁判は直ちに中止にして、当社と無条件でまず話し合う道を選ぶことを改めて要望する。
検察、控訴を断念。無罪判決が確定!
22年4月4日 NEWS
判決は、「説明した情報は愛知製鋼の工程と大きく異なる部分がある」として営業秘密に当たらないと判断。「本蔵氏は何が愛知製鋼の秘密に当たるかを整理した上で、秘密に当たらない部分(=マグネデザインの独自アイデア)を開示したことに着目して無罪の結論を導いた」ものであったと。さらに「警察官が秘密開示したと主張する工程は、その情報のうち大きく異なる部分をそぎ落として両者の共通の工程(=あたりまえ工程で公開情報)で、抽象化、一般化されすぎており、愛知製鋼の営業秘密を開示したことにならない」と指摘した。検察は、「この点を覆すのは難しい」と判断し控訴を断念し、上記判決が確定した。
愛知製鋼は、判決に対して、「弊社のMIセンサの製造における根幹の技術で在り、被告の行いが違法行為として判断されなかったのは誠に残念。」とコメントし、裁判所の公平な判決を謙虚に受け入れることを拒否し、いまだに“マグネデザインが秘密技術を盗用してMIセンサの模造品を試作して、それをGSRセンサと称している”と主張し続けている。
しかし、5年間の一連の裁判で、①GSRセンサは画期的な発見で、MIセンサと異なる。(GSRセンサ特許無効審判の審決)②両者の製造プロセスや製造装置は当然異なり、盗用の必要はなかった。(第一次告訴は不起訴、第二次告訴は無罪)③白板での秘密開示は無かった(第二次告訴は無罪判決)ことが明らかになっている。以上のように愛知製鋼の主張は全面的に否定されている。これは、秘密漏洩事件がそもそも無かったことを意味しており、愛知製鋼の一連の告訴は理由のない告訴で、虚偽であったということを示唆している。
これらの虚偽の告訴の背景としては、マグネデザインのGSRセンサ技術乗っ取りの企みではないかと疑わざるをえない事実が明らかになっている。愛知製鋼は、20年のホームページで、GHzパルスを採用し、6μピッチの微細コイルを開発して、MIセンサの性能改善を図る取り組みをしていること紹介している。GHzパルスを採用するセンサはGSRセンサである。17年の警察が強制捜査で押収したマグネデザイン社の秘密資料が愛知製鋼に開示されていたとおもわれるが、この秘密資料を参考にして、GSRセンサの模造品を試作し、それをMIセンサの改良品と称しており、GSRセンサ技術の乗っ取りを図っているのではないかと疑わざるを得ないと思われる。
現在、愛知製鋼は、マグネデザインに対して、4件の裁判攻撃を引き続き行い、研究開発を妨害しているが、今回の無罪判決と一連の裁判の結果によって、秘密漏洩事件が作り話であったことが明らかになっている。愛知製鋼は「一審判決および検察の判断を厳粛に受け止め」るならば、自らの虚偽告訴を反省して、直ちに裁判を取り下げることを改めて要求する。
*注)4件の裁判攻撃とは
❶秘密盗用(今回無罪判決)を理由とする損害賠償裁判係争(15億円)
❷GSRセンサ特許無効審判の審決(敗訴)に対しての訴訟提起
❸本蔵氏とマグネ社の資金、株式、特許権などを仮差押え
❹浅野氏・青山氏両名に対する損害賠償裁判への愛知製鋼の補助参加
無罪判決を受けて、愛知製鋼へ話合いを提案
22年3月24日 NEWS
愛知製鋼の一部の幹部による不正行為で、愛知製鋼とマグネデザインの信頼関係は喪失してしまいましたが、無罪判決(秘密漏洩事件はなかったとの趣旨の判決)を踏まえて、同社藤岡社長に対し、真摯に話し合って、信頼関係を回復し、未来志向で両者が協力しあうことを提案しました。話し合いの第一歩として、以下の趣旨の質問状を弁護士経由で郵送しました。
1.刑事裁判の結果を踏まえて、謝罪要求をします。
判決では、「本蔵らが開示した情報は、愛知製鋼の製造工程と重要な部分で大きく異なり、愛知製鋼の営業秘密を開示したとは言えない。」「開示情報は、独自に工夫した部分がそぎ落とされており、情報は抽象化・一般化されており、容易に思いつくもので、営業秘密とは言えない」として、秘密開示事件が無かったと判断しています。架空の秘密を作り、私を犯罪者として、告訴したことについて、謝罪することを要求します。
少なくとも、貴殿が、代表取締役社長として、必要な事実関係を精査せず、青山氏や浅野氏の技術鑑定を鵜呑みにして、私との話し合いもせずに刑事告訴した点について、謝罪を要求します。
2.今後の調停課題について
1)第一次刑事告訴(本蔵は“嫌疑不十分で不起訴)と第二次刑事告訴(起訴には無理がある”と裁判所の判決)は虚偽告訴であった可能性がある。
2)刑事告訴から逮捕起訴によるマグネデザインの損害は200億円を超えるものがある。
告訴当時、GSR原理を発見し、NHKに報道され、NEDO他から、生体磁気センサ、電流センサ、電子コンパスの開発で多額の補助金の提供を受けて、2020年に200億円を超える時価総額での上場を目指していたが、その計画が消失してしまったどころか、倒産寸前に陥った。
3)人権侵害について、本蔵個人は、逮捕後4カ月留置場に勾留され、甚大な精神的被害を受け、その後裁判が5年間続き、その間被告人として、自由が制限され、研究開発がほぼ凍結してしまった。
4)愛知製鋼からのGSRセンサ特許無効審判請求は、理由のない不当なものだった。しかし、本蔵は、3500時間以上の対策を強要されて、ほぼ3年間研究開発停止を余儀なくされた。被害もまた甚大だった。
誠実な回答をお願いします。
本蔵義信
以上、手紙の概要です。
3月24日付け中日新聞朝刊の社説に裁判について記事が掲載されました。
22年3月24日 NEWS
社説は、事件の本質と判決が日本の科学技術の発展に与える影響について指摘しています。
また識者の松田正久元愛知教育大学学長は、“本蔵君のGSRの学術論文は、・・国際的には高く評価されていますし、・・日本の科学技術は、この無罪によって守られたと感じています。”と今回の判決の意義についてコメントしています。
中日新聞Web :愛知製鋼裁判 何が「営業秘密」なのか(chunichi.co.jp)
3月18日名古屋地裁、本蔵・菊池両名に無罪判決
22年3月18日 NEWS
無罪判決は、NHKほかテレビ放送局、朝日新聞、毎日新聞ほか数多くの新聞社によって一斉に報道されました。5年間の無罪主張がやっと実りました。
判決では、「本蔵らが開示した情報は、愛知製鋼の保有する装置の工程とは重要な部分で大きく異なり、愛知製鋼の営業秘密を開示したとは言えない。」「開示情報は、独自に工夫した部分がそぎ落とされており、情報は一般化されており、容易に思いつくもので、営業秘密とは言えない」さらに、「(愛知製鋼は)一般化された情報について保護を受けようとするのは、いささか都合が良すぎる」「起訴には無理がある」と、異例の付言もありました。
さらに、検察が秘密開示の証拠の中心とした菊池氏の自白調書について、「開示した内容が営業秘密である」との証言の信用性は高くないと判断しました。
判決後の記者会見において、本蔵は、「捜査当初は何が違法と指摘しているのかわからなかったが、途中で愛知製鋼の作り話だと分かった。そしてホワイトボードの写真が秘密漏洩の証拠とされて逮捕されたが、そこにはマグネ社の新設備の新技術情報しか映っておらず、写真こそが決定的な無罪の証拠であると、無罪判決を確信していた。しかし本当に無罪判決をいただいて、正直ほっとした。」「Magnetics技術の進歩で、日本を今一度脚光を浴びる国にしたい。無罪判決をその出発点にしたい」と話しました。
菊池は、「業務をまじめに行っていただけなのに、秘密を盗み出したと犯罪者扱いされて憤慨している。調書は検察が脅迫で自分のストーリーを押し付けたものだ。無罪となってひと安心した」と話しました。
井上弁護士は、本無罪判決の意義について、「日本の国益にかかわる裁判で、非常に価値ある判決だった」と評価しました。
無罪判決の報道を受けて、本蔵・菊池両名の友人から、当社には多くの取引業者方から、また海外(10名以上)の方々から、祝辞メールや電話が寄せられています。さらに裁判当日50名近い支援者の方々が傍聴に駆けつけてくださりました。マグネ社は、倒産寸前に陥りましたが、関係各位の支援で無罪判決まで頑張ることができました。この場を借りて、5年間にも及ぶ支援・激励にお礼を申し上げます。
なお、愛知製鋼は、「不正開示された情報は弊社の根幹技術で在り、違法行為と判断されなかったのは誠に残念である。」と判決を認めないとコメントしています。先に愛知製鋼は当社の特許の無効審判を申し立てたが、敗訴しています。その審決の中で、「技術常識に反することを堂々と主張しており、誠に遺憾である」と叱責されたが、間違った審判だとして審決の取消訴訟を提起しました。
裁判所がどんな判決をしようとも、理由を示さずに自分たちは正しいと主張し続ける態度こそ問題である。この5年間の一連の裁判の敗訴を反省し、当社との共同事業へと舵を切ることを愛知製鋼の藤岡社長に改めて提案したいと思います。
朝日新聞3月16日付けの朝刊に本裁判の記事が掲載されました。
22年3月17日 NEWS
記事には原告・被告両者の主張が紹介されています。
久留米大学の帖佐隆教授(知的財産法:営業秘密と刑事事件の専門家)は、「通常の事件では、営業秘密を記載した書類の持ち出しが対象だが、今回は営業秘密が不明確のまま起訴したため、裁判が長期化した可能性がある」と問題を提起しています。
「民事裁判では営業秘密の特定が不十分な場合、請求が退けられる例は少なくない。刑事事件でも検察側が起訴時点で明確に特定すべきだ。」とも述べています。
秘密漏洩事件は愛知製鋼による作り話。被害者は本蔵・菊池である。
22年3月16日 NEWS
18日判決を前に、本蔵義信の主張
愛知製鋼は、マグネデザインのGSRセンサの発明に対して、『 (a)愛知製鋼の独自のMI技術を盗用して、MIセンサの模造品を試作し、それをGSRセンサと詐称している。(b)6件の本蔵特許は愛知製鋼に帰属すべきもので、勝手に開示された。さらに(c)秘密の磁石治具を外部に持ち出した。(d)WB(ホワイトボード)に秘密工程を開示したことによって製造技術が盗み出された。』として告訴した。これらの告訴は、GSRセンサが、MIセンサの模造品であるという大前提に立った上での告訴であった。そして、5年間に及ぶ一連の裁判で、これらの告訴全てが作り話であったことが明らかになっている。
*6件の特許は、GSRセンサ特許、3次元素子デザイン特許、磁気ジャイロ特許、GHz-回路特許、ワイヤ整列装置特許、ワイヤ熱処理装置特許である。
まず、(a)については、特許審判は、GSRセンサはMIセンサを凌駕する画期的な発明で特許とすべきものであり、GSRセンサは国際会議などですでに公認されているとの認識に立って、愛知製鋼の主張を退けた。(b)の特許6件は、不起訴または愛知製鋼が自ら取り下げて、決着が着いた。 愛知製鋼は、GSR素子=MI素子である以上、GSR素子を作るワイヤ整列装置の本蔵特許はMI素子を作る愛知製鋼の装置と同一だ(本蔵特許=愛知製鋼の装置)という作り話を取り下げた。この作り話が、この一連の事件を引き起こす引き金となったものであったが、余りにもひどい作り話であったので、自ら取り下げて裁判を回避した。敵前逃亡としか言いようがない。他方秘密漏洩の犯行事件そのものについても、 (c)の磁石治具を持ち出したとする事件は、不起訴になって決着が着いた。そして最後に(d)WB開示事件が、3月18日に判決される。犯行事件では菊池氏が実行犯とされていたが、業務上必要な範囲で愛知製鋼の秘密を開示していただけで、マグネデザインとは関係ないことが明らかになっており、これほどひどい作り話は無い。
WB事件では、強制捜査で押収したWB写真の中に、ワイヤ整列装置の図が記載されていた。そのことを取り上げて、WBのワイヤ整列装置=本蔵特許=愛知製鋼の装置という図式で、告訴⇒逮捕⇒起訴した事件である。本蔵特許=愛知製鋼の装置の図式の真偽が本裁判におけるハイライトであったが、本蔵特許は、GSR素子に対応してワイヤを弾性限界以上の強い力を負荷する装置であるが、愛知製鋼の装置は、MI素子に対応してワイヤを弾性限界以下のできるだけ弱い張力を負荷する装置で、基本仕様が真逆であった。違いがあまりにも明白であったため、愛知製鋼が裁判を回避し、本蔵特許=愛知製鋼の装置の図式が否された。
さらにWB写真には、位置決めの仕方として、基板側を固定基準にしてワイヤを移動させて位置決めをする方式が記載されているが、本蔵特許はワイヤを固定基準にして基板側を移動させるワイヤ基準式を採用しており、両者は真逆の考えであった。これによりWBのワイヤ整列装置≠本蔵特許≠愛知製鋼の装置という関係が明らかになった。
以上で両装置の機能と構造の違いが明確になり、裁判は決着したかのように思えたが、愛知製鋼は、共通工程が愛知製鋼の秘密だったと新たな作り話を持ち出した。しかし、F社が共通工程のワイヤ整列装置を市販していたことが判明し、共通工程=公開情報工程となって、秘密開示事件とは言えないことが明確になった。次に、愛知製鋼は磁石式治具(独自の多極着磁磁石構造)が秘密の核心部だと主張を変えたが、マグネデザインの治具は両面テープ固定式で、愛知製鋼の秘密は採用していないことで、その主張も否定されている。
では、WB写真は何を記載しているのか?それはF社の市販のワイヤ整列装置をGSR仕様に改造するために議論した内容を記載しており、それはマグネデザインの極秘情報であった。そこには、ワイヤに張力を負荷しつつ断線しないように取り扱う技術、ワイヤを精度よく位置決めする方式、および切断の仕方と両面テープによるワイヤ固定法など、愛知製鋼とは異なる革新的技術が満載されていた。被害者を装う愛知製鋼に、検察がこの極秘情報を開示することにより、マグネデザインは致命的な損害を受けることになった。
さらに、愛知製鋼は、2020年のホームページで、GHzパルスを採用し、6µmピッチの微細コイルを開発して、MIセンサの性能改善を図る取り組みをしていることを紹介しているが、GHzパルスを採用するセンサはGSRセンサである。GSRセンサであるものを「MIセンサ」と称するこの取り組みは、マグネデザインのGSRセンサ原理特許を侵害しているのではないかとの疑惑を持たざるを得ない。愛知製鋼はGSRセンサ原理特許の進歩性は認めたが、技術内容が理解できないとして第二次特許無効審判を提訴したものの理由なしと退けけられた。しかも、この無効審判の審決では、非常識な見解を堂々と主張するのは遺憾であると叱責まで受けている。にもかかわらず、この審決の取消訴訟を提起して、その特許を何がなんでも無効にしようとしているところを見ると、この特許が有効となった場合、マグネ社の特許を侵害する恐れがあるという不都合な事情を恐れているのではないかと疑いを持たざるをえない。
マグネデザインは、愛知製鋼の作り話(GSRセンサ=MIセンサ、および秘密漏洩事件)と一連の裁判攻撃で、この5年間開発業務が停止して、倒産寸前に陥ったが、いまだに倒産をしていないのが不思議である。もし倒産していれば、愛知製鋼はマグネデザインというベンチャー企業の乗っ取りに成功していたに違いない。断じてこのような暴挙を許してはいけない。
本蔵・菊池両名は、WB 写真の存在で逮捕されたが、事実を語っているWB写真が、無実を証明する決定的証拠となって、3月18日の判決で無罪となることを確信している。
以上 【文責:本蔵義信】
裁判の真相がマスコミの話題になっています。
22年3月11日 NEWS
3月8日(火曜日)SlowNewsの「調査報道+」の記事で、愛知製鋼の裁判攻撃の真相が「世界が驚く次世代磁気センサーを発明 特許400件のベンチャー経営者はなぜ法廷に立たされたのか」との記事の中で明らかにされています。是非ご一読ください。記者は宮﨑 知己氏
【調査報道+】 ベンチャーを立ち上げ、電気自動車の制御や生体磁気などの測定精度を引き上げる次世代センサーを発明し特許を取った経営者。古巣のトヨタ系メーカーから「営業秘密を開示された」と告訴されてしまう。しかし特許をめぐる審決では「超伝導現象の発見」に匹敵と高評価され、特許を維持。学術界も盛り上がるが、刑事裁判で有罪となれば発明はどうなる?そもそも知的財産高等裁判所があるのに刑事告訴という戦術は公正な競争なのか。注目されなかった5年に及ぶ裁判をウオッチした記者が日本に技術革新が起きない象徴的事件の裏側に迫る。
記事の詳細は、SlowNewsを見ていただくとして、記事に関する私の感想を紹介します。
私の研究経歴について、
本記事では、最初に裁判で私が証言した経歴に基づいて、書かれています。鉄につかない非磁性ステンレス鋼の開発、その磁性を測定する透磁率計の開発、および真逆の鉄につきやすい磁性ステンレス鋼の開発について、エピソードを交えて興味深く紹介しています。開発当時、VTRの非磁性マイクロシャフトの小型化や排ガス対策用の燃料噴射弁の迅速な開閉を可能にする問題などを解決したこと。さらにこれらの新材料を組み合わせて世界で初めてデンタル磁石を開発して、NHKに報道されるなど、私が磁性材料分野で注目される成果を上げたことをまず紹介しています。中国でしか生産しないレアアース(ジスプロシウム元素)を含まないネオジム磁石を開発し、山崎貞一賞を受賞したことや、透磁率計の開発経験を基礎に、容易にMIセンサを開発したことを紹介し、磁性材料分野での功績を紹介しています。なお記事にはありませんが、私はこれらの功績で2013年から2017年まで日本磁気学会の副会長を務めていました。
裁判の背景としては、
私が次世代MIセンサ(開発過程でGSRセンサの発明につながった)の開発に取り組む過程で、①12年、愛知製鋼のMIセンサがコストと機能の点で壁に直面し、その対策をめぐって社内対立があり専務を退任させられたこと、②13年、私は次世代MIセンサの開発を開始して、愛知製鋼側は、工場を閉鎖してローム社に事業委託してライセンス料をいただくことにしたこと、③全社的な対本蔵危機管理組織を結成して私の開発を警戒していたこと、④私の動きについては、私の開発プランを記したJST補助金申請書と未公開特許を不正に入手して、本蔵は愛知製鋼の技術を盗用して開発を進めていると誹謗中傷をしていたこと、⑤15年、私がGSR原理を発見して以降は、危機感を抱いて、2回の刑事告訴、本蔵の製造特許の譲渡処分禁止、GSRセンサ原理特許の無効審判とベンチャー企業の財産仮差し押さえの強硬策に打って出たことを紹介し、「どちらが不正競争に手を染めていたのかを疑ってしまう」と締めくくっています。
裁判の意味については、
「社長逮捕、財産差し押さえで倒産回避は奇跡的」と指摘した上での、愛知製鋼の裁判戦術に対する批判は、私は司法について素人ですが、的確な批判だと思います。
以下のように問題提起を行って本記事は締めくくられています。
「営業秘密を侵害された時、刑事告訴して捜査当局に証拠を収集させて、その証拠を使って民事訴訟(損害賠償)に利用する」という裁判戦術を採用しているが、営業秘密が特定されず5年も争うような事件にこの戦術を使用することは問題である。というのは、社長が逮捕拘留され、財産の差し押さえを受けると、通常倒産してしまい、裁判すら維持することができなくなる。その結果、真相が闇の中に埋もれてしまうかも知れない。
本記事は事件を理解する上で、熟読すべき記事だと思います。
文責:本蔵義信
刑事裁判記者説明会 井上弁護士からの刑事裁判の説明と質疑応答の結果
22年3月01日 NEWS
刑事裁判の審理内容や問題点等について、司法記者クラブ所属記者等に対して弁護団の見解を説明しました。当社本蔵・菊地も参加し、会場の記者からも熱心に話を聞いていただき、本蔵らからも記者の質問に答えました。
この説明会をとおして、記者の方々には本裁判の異常さや秘密漏洩事件そのものが疑わしいことを改めて認識頂き、無罪になるかもしれないとの感想を持って頂けたと思っています。
取材会にて弁護士から説明した本裁判のポイントを、①から⑫にまとめて以下に示します。
① 装置の図面など「物」として特定できるものが「営業秘密」で漏洩されたという通常の裁判と異なり、本蔵氏が記憶した情報をホワイトボード(WB)と口頭で説明したことが営業秘密の漏洩だと検察官が主張した事件で、漏洩されたと主張された営業秘密が、そもそも愛知製鋼が保有する技術情報であるのかが、極めて疑わしいこと。
② 検察官は、装置の工程情報が営業秘密だと主張しながら、愛知製鋼が保管する装置の工程情報が読み取れるシーケンスラダー図等の客観的な証拠物が存在するにもかかわらず、そうした客観的な証拠の提出を拒み、装置の工程情報の内容を同社従業員(証人)の証言で立証するとして裁判を強行したこと。
③ ②の証人尋問の結果明らかとなったことは、愛知製鋼の装置の工程は検察官が営業秘密だと主張するようなものではなく、しかも、愛知製鋼の従業員間においても、何が愛知製鋼の装置の真の秘密なのか、ということについて見解が食い違っていたこと。
④ 検察官は営業秘密だと主張する装置の工程情報が愛知製鋼内のQC工程表、作業標準書などの生産技術書類によって秘密管理されていたと主張したが、そこには検察官が主張する工程情報は一切記載されていなかったこと。
⑤ 事件当日にWBでの議論に立ち会った3名全員の供述から、WBに記載された情報が愛知製鋼の独自の技術情報ではないことが明らかになり、さらに、愛知製鋼の従業員でさえ、WB には愛知製鋼の独自の技術情報の記載が一切ないことを証言で認めたこと。
⑥ 捜査機関の捜査の経過を見ても、検察官は第一次告訴(ワイヤ整列装置の秘密治具が営業秘密だと主張した事件)での起訴を断念した後、第二次告訴(WBの愛知製鋼のワイヤ挿入装置の機能と構造が営業秘密だと主張した事件)についても、起訴時点でその立証が破綻、公判に入って初めてワイヤ挿入装置の工程情報が営業秘密だとの主張に変更する等、警察官や検察官が主張する犯罪事実が二転三転しており、警察官、検察官の捜査があまりにも杜撰であったこと。特に検察官は、問題とされた、愛知製鋼が装置の特許出願をした事実すら把握していないなど、必要な証拠収集・捜査を全く行っていないことが明らかとなった。
⑦ そもそも本蔵は、MIセンサとは別の技術であるGSRセンサの開発に取り組んでいたのであり、愛知製鋼のMIセンサ技術やそのために必要な装置の情報など全く必要としていなかった。愛知製鋼は、「GSRセンサは、MIセンサの模造品で、同社から技術を盗用して試作したものだ」と主張していたが、GSRセンサ特許無効審判において、GSRセンサはMIセンサに対して進歩性を有するものであるとの審決がなされており、この審決を愛知製鋼も受け入れざるを得なかった。また装置についても、マグネ社の装置に関する特許は、愛知製鋼の技術を盗んだものだ(冒認出願だ)として申し立てた裁判についても自ら取り下げてその主張を撤回している。実際にWBに記載された装置は、愛知製鋼の装置とは、その機能も構造も工程も全く異なるものであった。愛知製鋼のものはMI特性を実現するためにワイヤに弾性限界以上の張力を負荷しない装置であるが、マグネ社のものは弾性限界以上の張力を負荷して、その張力を使って張力熱処理をしてGSR特性を実現する装置である。両者は技術思想が真逆のものであり、マグネ社の装置を作製するうえで愛知製鋼の装置が参考になる余地はなかった。実際に装置を作製した装置メーカー設計者も、他社の装置を参考にした事実はない、完全なオリジナルだと証言した。
⑧ 検察は、菊池自白調書だけを頼りに立証を試みているが、その内容はWBの記載をはじめとした客観的な証拠や、他の証人の証言と著しく食い違っており、全く信用できるものではない。また脅迫によって誘導自白させられたもので証拠には値しない。さらに、菊池氏は当時愛知製鋼の常務であった浅野氏らに業務報告しながら本業務に必要な範囲で秘密を開示しており、会社に内緒にしたり、本蔵氏からの指示で行ったりした事実はないことを証拠で明らかにした。検察はこの点についても証拠を上げて反論しておらず、反対尋問権の放棄という異常な事態になっている。
⑨ 愛知製鋼は、第一次刑事告訴、第二次刑事告訴以外にも、13年から本蔵氏はMI技術を盗用(4件の特許を出願)した犯罪者だとして、浅野常務を本部長にした対本蔵危機管理組織を結成し系統的にマグネ社の開発を妨害していたこと、それにも拘わらず、本蔵氏がGSR原理を発見しNHKなどで紹介される事態になって17年以降、刑事裁判を含む一連の裁判攻撃を開始した。ワイヤ整列装置特許裁判と仮処分、GSRセンサ特許つぶし裁判、損害賠償裁判とマグネ社と本蔵の現金や株式の仮差押え(つまり兵糧攻め)。
この攻撃を受けてマグネ社は倒産寸前に陥った。もしマグネ社が倒産しておれば、マグネ社は5年間もの間、一連の裁判攻撃に対抗できず、GSR技術は愛知製鋼に奪い去られたことは間違いない。(井上弁護士の当日の説明)
⑩ 愛知製鋼が申し立てたGSRセンサ特許無効審判において、特許庁審判官は審決において、愛知製鋼に対し、“技術的に非常識な意見を堂々と主張しており遺憾である”と叱責しており、「GSRセンサはMIセンサの模造品」だとの愛知製鋼の見解が理由のないものであることを指摘した。
この愛知製鋼の見解こそ、本蔵がMI技術を盗用したという事件の根本であり、この見解の誤りが明白になり、愛知製鋼の主張の根本がすでに瓦解した以上、同社の主張の全てが作り話であったとの疑惑が生じる。つまり事件の捏造である。
⑪ こうした事件の経過をみれば、愛知製鋼の一連の裁判攻撃の意味とは、マグネ社が愛知製鋼のMI技術を盗用したという根拠のない主張を振りかざして、愛知製鋼がマグネ社のGSR技術を奪い取らんとする試みであり、別の言葉を使えば、大企業が資金力にものを言わせて、技術常識に反する裁判を提訴することで、ベンチャー企業の最先端技術を奪わんとする試みである。
⑫ その他にも、本裁判では愛知製鋼は、犯罪被害者保護法を利用して「被害者」として裁判記録の閲覧・謄写もしている。その記録の中には、マグネ社の営業秘密に相当する機密資料だけでなく、他の装置メーカーや大手企業の企業内情報も含まれていた。果たして、こうした刑事裁判を利用した他者の営業秘密取得行為が許されていいのだろうか。この裁判は、さらに深刻な問題を孕んでいる。
追記:
最近愛知製鋼が、MIセンサもGHzパルスを採用すると感度が向上し、MIセンサの原理、つまり20MHzパルスで最適値をとり、GHzパルスでは大幅に感度が低下するという原理とは異なる主張をして、実際にGHzパルス回路を可能にするASIC(集積回路)を製作して新聞発表した。発表内容の詳細は定かでないが、GHzパルスを基礎にした磁気センサはGSRセンサを意味し、愛知製鋼がGSRセンサの模造品を試作し、それをMIセンサと詐称している疑いがある。愛知製鋼が異常で、マグネ社のGSR特許つぶし攻撃をする理由は、GSRセンサ模造品がGSRセンサ特許に侵害するかもしれないと恐れているためかもしれない。
2月17日、刑事裁判記者説明会を開催
22年2月21日 NEWS
3月18日裁判判決を前に、本裁判について、マスコミ関係者からの関心が高まっています。弁護団は、マスコミ関係者からの事件の背景と論点および判決の見通しなどに関する質問に対し、説明会およびマグネデザイン見学会を開催しました。
新聞社およびテレビ局10社にご参加頂き、説明会後、裁判は無罪になりそうだとの感触を持たれた方もおられました。
当日使用した、説明資料をホームページで紹介します。
事件の技術背景について説明の要旨は以下の通りです。
(1)愛知製鋼の主張は、
① マグネ社のGSRセンサはMIセンサの模造品で、MIセンサ技術を盗用して試作したセンサである。本来ならば、本蔵氏のGSRセンサ特許はアイチに帰属すべきものである。(毛利意見書、この意見が本事件の根源である)
② マグネ社の磁気ジャイロ特許、3軸素子デザイン特許、電子回路特許、ワイヤ整列装置特許、ワイヤ熱処理特許、以上5件の特許は、すべて愛知製鋼の発明品を盗用して、勝手に特許出願したものである。(第一次刑事告訴状、“青山”特許査定書2件)
③ GSR素子は、MI素子の製造技術を記載したQC工程表をサーバから盗み出して試作したものである。(第一次刑事告訴状)
④ 製造技術のコア技術である磁石式治具と図面を持ち出して、コピー品を製作した。(第一次刑事告訴状)
⑤ マグネ社のワイヤ整列装置の機能と構造は、愛知製鋼の装置と同一である。本蔵氏はホワイトボード(以下WB)を使って、それをF社に開示して装置を製作させた。(第二次刑事告訴状、3件のWB鑑定書)
⑥ 本蔵氏は愛知製鋼の装置内工程をF社に開示して、装置を製作させた。(第1回公判検察の冒頭陳述=愛知製鋼主張と考えるべきもの)
つまり、GSRセンサはMIセンサと同じものであり、それは愛知製鋼のプロセス技術、装置、治具を盗用して製造したものであるとの主張が、今回の事件の端緒となった。
(2)対して、マグネ社側の主張は、
① GSRセンサは基本発明であり、MIセンサとは異なる技術である。この技術はGSR特許無効裁判の審決および著名な国際学術誌で公認されている見解である。審決がGSR特許の進歩性を認めたことについて、愛知製鋼自身もすでに認めている事実である。学術誌が公認している件についても、愛知製鋼は反論すらしていない。(GSR特許無効審判の審決、Sensors誌やJMMM誌のGSRセンサ学術論文)
② 5件の特許については、第一次刑事告訴の取り調べで、全て説明し不起訴になった。その処分について、愛知製鋼は抗議していないし、特許無効審判も申し立てていない。愛知製鋼の告訴には理由が無かったということで決着済みである。
③ GSR素子とMI素子の製造技術は同じであるとの見解だが、GSR素子の製造技術は、半導体プロセスとメッキ工程との違いがあり、この新技術では10倍も微細な素子コイルができる。この新技術は名古屋大学が考案したもので、文部科学省のナノテクプラットホーム事業の6大発明賞を受賞した技術であり、愛知製鋼の告訴には理由が無いと、第一次刑事告訴の取り調べで、説明し不起訴になった。その処分について、愛知製鋼は抗議しておらず決着済みである。
④ 磁石式治具について、愛知製鋼製は、多極着磁磁石の磁力でワイヤを溝に引き込み、切断後は張力を無くして仮止めし、MI特性を確保するものであるが、マグネ社製は、ワイヤを両面テープに押し当てて仮止めし、大きな張力を残存させながら、張力熱処理を行ってGSR特性を付与するものである。ワイヤの仮止めの仕方と目的が真逆の治具であり、愛知製鋼の告訴には理由が無いことを明らかにし、第一次刑事告訴の取り調べの結果不起訴になった。
なお、本件は民事裁判で、菊池氏が持ち出した事件として係争中である。菊池氏は公判の中で、F社との取引は浅野常務らに報告した業務上の行為であったことを証拠で示した。対して検察は反論すらしなかったことを指摘しておきたい。
⑤ マグネ社のワイヤ整列装置と愛知製鋼の装置とは、共通部は公開情報で、相違点は両者の目的の違い、つまりGSR素子は弾性限界以上の大きな張力の仕様かMI素子は弾性限界以下の張力を極力かけない仕様かの違いに起因するものである。装置の機能を左右する重大な相違点があり別技術である。検察は、第二次刑事告訴の第1回公判でこの主張を放棄しており、理由がなかったことは明白である。
特許的には両者は別個な特許技術として成立している。愛知製鋼も別技術と認識しており、両者は同じだという告訴は理由のないものであった。愛知製鋼は特許無効裁判の申し立てを前提に、マグネ社が特許権の使用を禁止する仮処分決定を裁判所から受けていたが、その後この申立てを自ら取り下げており、理由のない告訴であることは告白している。(愛知製鋼の供託金1億円は現在裁判所で塩漬けとなっている)
⑥ 検察が秘密開示したという検察工程は、検察が作文した架空工程である。検察工程は、ワイヤ基準線の位置決め方式を開示したとなっているが、WBの図には、2個のリール位置決め方式が記載されており、両者は真逆の工程で、WB記載の情報と対応していない。また、愛知製鋼の西畑証人は、検察工程では愛知製鋼の装置は稼働できないと証言しており、この証言は愛知製鋼の秘密とも対応していない。それは、マグネ社の特許の工程を参考にして、作文した工程である。その証拠に「ワイヤ基準線の位置決め方式(基板側を移動させて調整)」は、事件1年後に本蔵氏が考案したアイデアであり技術用語である。それは検察工程に含まれるはずがないものである。さらに、愛知製鋼は、先端ガイド位置決め式(ワイヤを移動させて調整)を採用しており、両者は真逆の考えの技術である。
架空工程である検察工程は論外として、西畑証人による愛知製鋼の装置の秘密工程(西畑工程)とマグネ社のそれとを比較すると、愛知製鋼のそれは、公開情報をベースにMI素子の量産を可能にする工程で、数多くの細部ノウハウ、つまりワイヤをゆるゆるに張って取り扱い、MI特性を発現させるノウハウを含んだものである。一方、マグネ社のそれは、公開情報をベースにワイヤをピーンと張って、GSR特性を実現するためのノウハウからなっているものである。両者の装置の工程は大きく異なっている。
愛知製鋼の青山証人は、公開情報工程と磁石治具を組み合わせただけの基本工程が愛知製鋼の秘密工程だ。西畑氏の証言した数多くの細部ノウハウ秘密は些細なことだ。公開情報は接着剤を使用しており、磁石を使用して仮止めするので相違すると主張した。しかし、技術比較の均等論によれば、ワイヤを固定する機能の点では接着剤と磁石は同じで代替可能であり、両技術は同じと見なされる以上、青山証人は、愛知製鋼の工程には秘密はないと証言したに等しい。これは、西畑工程は、基本工程は当たり前で、細部ノウハウが秘密。青山工程は基本工程が秘密で細部ノウハウは些細なことだ。と両者は真逆の考えの意見であり、愛知製鋼が開示されたと称する秘密工程が証人によって異なり、特定されていないことが明らかになっている。本来ならこの時点で公訴は棄却されるべきものである。
以上、愛知製鋼の主張には理由が無いことを説明した。GSRセンサがMIセンサと原理的に異なる技術である以上、GSR素子の製造方法や製造装置が愛知製鋼のMI素子のそれと異なるのは当然のことである。GSRセンサとMIセンサは同じだ。だから製造技術や装置情報を盗用したという愛知製鋼の主張は、裁判の過程でことごとく否定されている。
(3)愛知製鋼が根拠とした技術鑑定書について
愛知製鋼は告訴にあたり、6件の技術鑑定書を作成し検察に提出した。
(GSRセンサ原理に関する毛利意見書、特許に関する2件の青山特許鑑定書、3件のWB鑑定書)
すべての鑑定書は、不起訴対象となったり、検察に採用されなかったりしており、理由が無いものであることが明らかになっている。特に3件のWB鑑定書は、検察は愛知製鋼から受け取ったにも関わらず、裁判に採用していない。さらに、愛知製鋼の工程については、愛知製鋼が特定した工程を採用せずに、それと異なる検察愛知製鋼工程なるものを作文して犯罪立証に使用しており、杜撰な技術鑑定書に基づく刑事裁判は許されるべきものではない。
*次回、井上弁護士の裁判説明を掲載する予定です。
参考資料:説明資料(PDF)
参考資料の解説
資料1)GSR原理とMI原理の違いを説明した資料。87年TDK特許で磁気を検出するセンサ構造は確立されたが、励磁パルスの周波数が、KHz(TDK特許)⇒MHz(MIセンサ)⇒GHz(GSRセンサ)と増加し、特性の改善が図られてきた。GSRセンサは、MIセンサの3つの欠点を、GHzパルスと表面磁区のスピン回転に着目して解決したセンサである。
資料2)GSRセンサは、国際的学術誌SensorsやJMMMに掲載されて国際的評価を勝ち取っている。大反響と言える。
資料3)MI素子とGSR素子の違いを説明した資料。大学発の素子から愛知製鋼のMI素子、それを100倍も微細化したGSR素子を示して、GSR素子は、半導体製造プロセスとASIC面に直接成形するプロセスの開発によって実現したことを示した。
資料4)ワイヤ整列装置の技術進歩の経緯を示した資料。公開情報をベースに、愛知製鋼はMI素子を製作する仕様の装置、マグネ社の装置はGSR素子を製作する仕様の装置で、双方特許が成立しているように、両装置は技術思想レベルから異なる。
資料5)愛知製鋼の治具とマグネ社の治具を比較した資料。愛知製鋼は、磁力でワイヤの張力ゼロで固定し、マグネ社は両面テープで大きな張力で固定、後で張力熱処理を実施することを可能にした治具で、構造と機能が異なっている。
資料6)愛知製鋼が提出した技術鑑定書を評価した資料。愛知製鋼は6件の鑑定書を提出したが、すべて却下されており、告訴は理由のないものであったことは明らかである。
資料7)GSRセンサを紹介した資料。1mm×1mm程度の大きさのセンサでnTレベルの微小磁界の測定が可能である。
雑誌記事の紹介:FACTA ONLINE 2022年2月号
22年1月24日 NEWS
経済紙FACTAが、「愛知製鋼に特許庁怒りの審決。『技術常識に反する主張を堂々とするな。』と窘められたトヨタ系名門企業(愛知製鋼)で一体、何が?」と題する記事を掲載しました。
この記事は、特許庁が、「GSRセンサとMIセンサとでは動作原理が異なる、またGSR原理の発明を『新現象を発見した基本発明』である」と認定したことを意味している。すなわち、愛知製鋼が、「GSRセンサはMIセンサと同じで、技術を盗用したものだとして行った一連の裁判攻撃が正当なものでなくなる」ことを指摘したものである。
文献資料:FACTA2022年2月号
2022年社長年頭の挨拶
当社社長本蔵義信による「2022年社長年頭挨拶」を下記の通りお知らせいたします。
記
明けましておめでとうございます。今年は寅年。私は年男として、当社の飛躍の年にしたいと張り切っています。
1.昨年の反省と今年の展望
昨年は、愛知製鋼からの想像を超える裁判攻撃に耐えて、GSRセンサの第2号ラインの建設、ステンレス磁石の製造ラインの建設および研究設備の充実(研究室数を4倍に増強)、国際的に著名な学術誌SensorsによるGSRセンサ特集号発行の決定(編集者は本蔵・Zhukov氏)、さらに営業成績も順調に拡大した年でした。
今年は、まず3月18日の刑事裁判の判決で、勝利を確信しています。その上で、5か年事業計画を発表する予定です。GSRセンサおよびステンレス磁石の事業の立ち上げと独自社屋への移転を予定しています。“21世紀はMagneticsの時代”をスローガンに飛躍を開始する年にしたいと考えています。
なお22年度の事業計画は、刑事裁判勝利後に協力会社と株主各位に公表する予定です。
2.刑事裁判の真相と今後の見通し
秘密漏洩事件の裁判で、2017年1月から5年もの歳月が経過しました。初公判以来、膨大な証拠を提示して反論し、事実を解明してきました。その結果、秘密漏洩の証拠とされたホワイトボードの写真こそが、実は無実を証明する最大の証拠でした。写真には、愛知製鋼の秘密技術は記載されておらず、GSRセンサ開発に必要な新技術だけが記載されており、事件そのものが作り話しであったこと、および事件の真相は、愛知製鋼よるGSR技術乗っ取り、つまり大企業によるベンチャー企業の乗っ取り事件であったことが明らかになっています。
事件の全体像を説明すると、愛知製鋼は、当社の特許は愛知製鋼の技術の盗用によるもので、本来愛知製鋼に帰属すべきものだ、本蔵らの犯罪を許してはいけないと主張して、裁判攻撃を始めました。①2016年8月に、磁石治具の図面が盗まれたとして刑事告訴(第一次)し、あわせて、②当社の装置特許についての処分禁止の仮処分、③15億円もの損害が出たとして私と当社の預金、資産、株式などの仮差押えと、当社を倒産寸前に追い込みました。さらには、④当社のGSRセンサ原理特許の無効審判請求(第一次:進歩性が無いので無効)と、当社の収益源に攻撃をかけてきました。
①の第一次刑事告訴は不起訴となり、②の装置特許についての仮処分は愛知製鋼自らが取り下げて決着がつき、③の仮差押えや損害賠償訴訟は申立ての内容から①の第一次告訴で不起訴になった案件をほぼ取り下げて、係争中のホワイトボード事件の対象のみに変更する形になっています。④の無効審判も、GSRセンサ特許の進歩性が認められて、愛知製鋼の敗訴が確定しました。以上のいずれの申立てにおいても愛知製鋼が敗訴し、愛知製鋼の申立てには理由が無かったことが判明しており、裁判制度を利用した営業妨害と当社の乗っ取りを策した攻撃だったと思われます。想像を超える大規模な攻撃で、倒産しなかったのが不思議です。
現在、⑤ホワイトボード秘密漏洩事件を対象にした第二次刑事告訴の刑事裁判、⑥愛知製鋼からの損害賠償請求訴訟(15億円)、⑦当社から反撃第一弾として、決着済みの①~④の裁判で明らかになった本蔵らへの誹謗中傷行為にともなう損害賠償請求訴訟(3億円)、⑧愛知製鋼から再度、上記④のGSRセンサ原理特許の無効審判(第二次:クレームの意味が不明確)、⑨当社から上記③の仮差押えの解除を要求した民事裁判、以上5件の裁判や審判が行われています。
すでに述べたとおり、⑤の刑事裁判では、問題となっている秘密漏洩事件は完全な作り話であったことが明らかとなりました。⑥と⑦はお互いが被害者だとしての民事上の損害賠償訴訟です。⑧の第二次GSRセンサ原理特許の無効審判については、再び愛知製鋼が敗訴しましたが、同社は特許庁の審決を不服として東京知財高裁に提訴しました。恥の上塗りと言わざるを得ません。⑨は事務手続き裁判です。
⑤の第二次刑事告訴の刑事裁判で秘密漏洩事件が作り話であったとの判決が出れば、すべての裁判や審判は一件落着すると思っています。その場合、愛知製鋼は秘密漏洩事件という作り話で、当社に重大な損害を与えたことの責任と、同時に私と菊池氏を誹謗中傷し、二人の人権を踏みにじったという責任が社会的に問われることになるのではないかと思います。
3.GSRセンサ特許の無効審判の審決の意味
愛知製鋼は、2020年1月31日、GSRセンサ特許(特許第5839527号)について特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明が無く明確性に欠くなどと主張をして、特許無効審判請求をしました。(上記⑧の審判)
これに対し、特許庁は、2021年11月25日、愛知製鋼の主張はいずれも理由がないとの審決を下しました。特筆すべきは、審決において、請求人、すなわち愛知製鋼の主張は、「熱力学・統計力学を無視した・・常識外れの主張」、「このような技術常識に反する主張を堂々としていることを大変遺憾に思う」、「結局のところ、技術常識に反した曲解に基づくもの」、さらに「技術常識や日本語の一般的意味を無視し、記載が不明瞭であるという結論をただただ導かんとすることのみを目的として、記載中の取るに足らぬ曖昧さを曲解、拡大しているものであって、到底これを支持することはできない」と愛知製鋼の審判請求姿勢を叱責している点です。また審決では、「本件発明のように新現象を発見した基本発明」と評価し、しかも「現時点ではGSR現象はMI現象と原理的に異なる新たな物理現象・・・として学術上評価されていると認められ」と愛知製鋼の見解を全面的に否定しています。
この審決の指摘は、愛知製鋼の特許無効審判請求は理由の無いもので、当社の営業妨害を目的とした社会的妥当性を欠く行為であることを浮き彫りにしていると思います。
4.社員および関係各位の皆さんへ
2017年1月からの5年の歳月に及ぶ裁判を振り返って、弁護団と支援する会の皆様に、改めて感謝を申し上げます。社員や協力会社の方々にも、社会からの冷たい視線に耐えて、今日まで会社を支えて頂いたことに感謝を申し上げます。いまだにコロナ感染が拡大し、厳しい経済状況が続いていますが、健康に気を付けて共に頑張って参りましょう。
以上
マグネデザイン株式会社
代表取締役社長 本蔵義信
弁護団最終弁論で無罪を主張。来年3月18日の無罪判決に期待
21年12月23日NEWS
12月22日検察は、本蔵氏に3年間の懲役、菊池氏に2年間の懲役を求刑した。対して、12月23日弁護団は、秘密開示事件は捏造で、愛知製鋼によるマグネデザインのGSRセンサ技術の乗っ取りが事件の真相である。両名は以下の理由を挙げて無罪である。と主張した。
これまで、愛知製鋼は、
① GSRセンサはMIセンサの模造品だとして、GSRセンサ特許無効審判を請求した。
② MIセンサの模造であるGSRセンサ関連の本蔵特許6件は、愛知製鋼に帰属する特許であると刑事告訴および民亊裁判の提訴をした。
③ GSR素子はMI素子の類似品で、その製造方法と装置は愛知製鋼の技術の盗用である。
④ 素子製造の秘密装置の機能と構造および治具や図面を盗用し、
⑤ その工程に関する技術を持ち出した。として刑事告訴と民事裁判の提訴をした。
しかし、①では、学会はGSRセンサをMIセンサと違う技術として公認し、愛知製鋼は特許無効裁判で敗訴した。②③では、裁判過程で理由が無いことが判明し、愛知製鋼自身がすべての主張を取り下げたが、本蔵氏を秘密盗用の犯罪者として誹謗中傷した重い責任は残っている。④では、刑事事件において、秘密装置の治具、機能と構造の点では両者は異なるとして決着済み。つまり愛知製鋼のMIセンサ(磁壁移動という古典的電磁現象)とマグネデザインのGSRセンサ(スピン回転という量子論的電磁現象)が原理的に異なっているにも関わらず、愛知製鋼は、両者は同じ技術で、愛知製鋼の秘密を盗んで開発したものだと主張したが、すべて理由が無い言いがかりであった。
本裁判は、⑤の最後の言いがかり、つまりGSR素子とMI素子の製造装置の工程が同じで、その工程が盗まれたという点についての争いである。愛知製鋼は、両者の工程を比較して、共通の基本工程と素子特有の相違工程に分けて、愛知製鋼の青山証人は基本工程が愛知製鋼の秘密だと証言し、西畑証人はMI素子特有の工程が愛知製鋼の秘密だと真逆の証言をした。本蔵氏は、基本工程は公知情報であることは明白で、GSR素子とMI素子特有の工程が両者の各々の秘密であり、西畑証言は正しいが、青山証言は理由が無いものであることを指摘した。その上で、本蔵氏は、開示した情報はマグネデザインの秘密工程であって、愛知製鋼の秘密工程は開示していないと主張した。愛知製鋼の告訴⑤は、①~④と同様の言いがかりで、秘密漏洩事件そのものが存在しておらず、無罪である。
最終陳述で本蔵氏は、愛知製鋼の①から⑤の言いがかりの狙いは、マグネデザインのGSR技術の乗っ取りであり、大企業によるベンチャー企業の技術の乗っ取りという重大事件であると主張した。また、菊池氏は、愛知製鋼の業務として取引先に情報を開示した行為を、犯罪だとされた冤罪であり許せないと主張した。
本蔵被告人、事件は作り話と全面否定。事件の真相は愛知製鋼によるGSR技術の乗っ取り作戦と主張。検察官は反対尋問で反論せず。
21年11月26日NEWS
愛知製鋼との刑事裁判、すべての証人質問が完了
本蔵氏は、検察が特定した愛知製鋼の秘密開示情報(基本工程と類似)について、愛知製鋼の二人の証人(西畑氏と青山氏)が異なる証言をしたことを指摘し、愛知製鋼の秘密は特定されておらず、告訴自体が不当である旨を主張した。
西畑氏は、愛知製鋼の秘密を、「基本工程は当たり前に見えるが、磁性ワイヤの取り扱いが難しく、苦労して開発したノウハウを含む一連の工程が秘密」と特定し、一つでも欠けると愛知製鋼の装置は稼働しないと証言した。また、検察が特定した愛知製鋼の秘密情報(基本工程と類似)では、愛知製鋼の装置は稼働せず架空工程だと証言した。
他方、青山氏は、基本工程そのものが重大秘密で、対策ノウハウは本質的ではないと秘密を曲解していた。
本蔵氏は、両者の秘密特定は真逆であったことを指摘した。
本蔵氏は、秘密開示情報には事件当時は発明されていなかった技術が含まれていること、架空工程であること、さらに青山氏が主張する基本工程はFA電子など同業者にとって周知情報であることを明らかにした。その上で、愛知製鋼の刑事告訴の根拠となった3種類の技術鑑定書は、いずれも基本工程が愛知製鋼の秘密であったという青山氏の曲解に基づくでたらめな鑑定であることを指摘したうえで、秘密漏洩事件そのものが架空の作り話であると主張した。
本蔵氏は、秘密漏洩事件を捏造した今回の事件の真相について、次のように証言した。
事件の端緒は、青山氏が13年8月本蔵氏のJST申請書(秘密文書)を不正に入手し、その中に記載されていたすべての本蔵特許が愛知製鋼の秘密を盗み特許出願したもので、告訴すべきだと主張していたことである。
青山氏による刑事告訴の直接的動機は、本蔵氏によるGSRセンサの開発の成功と自らのロームProjectの失敗が対比されて、失敗の責任を追及されることを恐れたことと思われる。そこで、ワイヤ整列装置に関する本蔵特許は愛知製鋼の秘密を盗み特許出願したものだと本蔵氏を犯罪者扱いにして、今回の一連の裁判を起こした。裁判を利用してマグネデザイン社を倒産に追い込み、GSR技術を奪い取ることを企んだものだと証言した。
最後に、本蔵氏は、大企業によるベンチャー企業の技術の乗っ取りという横暴を許せば、日本の科学技術の危機である。この企みに負けないで、GSRセンサを必ず世の中に出して、技術革新に貢献するつもりですと、証言を締めくくった。
検察官は、反対尋問において、秘密開示情報が架空工程である、秘密開示事件をそのものが作り話だと証言されたにもかかわらず、一切反論をせず、反論権を放棄したと言わざるを得なかった。
9月29日菊池被告人の主質問終了。検察官による反対質問が始まる。
21年10月5日NEWS
1)菊池氏は、2回の被告人質問で事件の全経緯を詳細な資料を使って説明し、事件に関する自白調書が事実に完全に反する虚偽であることを明らかにした。その上で、犯行を認めなければ、いつまでも勾留するぞと脅されて、意に反する調書を認めさせられたことを供述した。
今回は、取り調べにおける脅迫の実態を供述した。まず以下の点で押し問答になり、脅迫されて警察の言い分を認めざるを得なかったと供述した。具体的には、
① 愛知製鋼の磁石式治具やワイヤ挿入機などの基本設計部に関しては、菊池氏は周知情報だと主張し、警察はアイチの秘密だと主張し、押し問答となった。
② 2012年12月4日リコー会議は、愛知製鋼の試作用ワイヤ挿入機の見積もりを西畑氏が依頼した会議だった。菊池氏はこの会議に参加していなかったと主張し、警察は菊池氏が参加していたと主張し、押し問答となった。
③ 翌年3月5日菊池氏と西畑氏はFA社との会議にて、愛知製鋼の試作用ワイヤ挿入機の製作は可能との回答をもらい、本蔵氏は将来のための高度仕様を追加要求した会議だった。しかも菊池氏は本会議について事前事後に浅野常務に報告し了解を得た案件で、会社の業務だったと供述。対して警察は、FA社は独自では製作する力はなく、愛知製鋼の業務ではなかった。しかも、本蔵氏は出席しておらず、4月9日に愛知製鋼の秘密を説明することにしたはずだと主張し、押し問答となった。
④ 4月9日本蔵氏と菊池氏は、FA社と新型ワイヤ挿入機の仕様についての会議を行い、愛知製鋼の試作機の仕様と本蔵の高度仕様に関する要求に満足な回答を得たと主張し、これに対して警察は、本蔵が愛知製鋼の量産機の秘密を開示して、類似品の製作を依頼したと主張し、押し問答となった。
以上の押し問答の結果、逮捕された。逮捕後の取り調べは、警察が用意していた間違った内容の調書の確認のみで、実際検察官の調書には間違った内容がそのまま引き継がれていた。菊池氏の話が正しく反映されていなかったが、留置所から出れないぞと常に脅迫されていたので、この時は調書の内容を認めざるを得なかった。
2)菊池氏は、マグネ社の業務に関する自白調書について証拠を列挙して、すべてが警察の作り話で、信用できない調書であること、および脅迫の結果であり、本人の意思に反する調書であると供述した。
3)検察官による反対質問は途中であるが、菊池氏が証拠を示して、①から④の押し問答した点について、自白調書は作り話であると供述したが、検察官は、菊池氏が取り上げた証拠に対して反論をしなかった。反対質問が終了した後で、その詳細な内容を紹介したい。
引き続き、菊池被告人の証言。
21年9月13日 NEWS
FA電子に依頼したワイヤ整列装置や磁石治具の送付は愛知製鋼の業務一環だった。秘密漏洩とは関係ないと供述。
菊池氏は、前回事件当時までの経緯を証言した。今回は事件以降について供述した。西畑氏の協力を得て小型化素子(ワイヤ1本)、Apple向け素子(ワイヤ2本)、アレイセンサ素子(ワイヤ3本)などの3つの新型素子試作を推進していた。菊池氏がFA電子に対して依頼したワイヤ張り試験装置は、これらの3つのタイプの試作のために必要な試作機で、同氏は、第3生産技術部長という責任者の立場で、手配を急でいた。5月9日、試作機の手配と並行して、素子の図面、試作に必要なマスク金型の手配、および試作用磁石式治具の準備も始めていた。これらの一連の業務からみても、菊池氏の行為は愛知製鋼の業務であったことは明らかであると供述した。
警察は、これらの菊池氏の行動が、愛知製鋼には内緒にして本蔵氏の指示で秘密漏洩をしていたと主張しているが、菊池は事件4月9日以降の数多くの新証拠で愛知製鋼の業務として行っていたことを明らかにした。以下新事実のいくつかを列挙する。
新事実①;菊池氏は、試作機の手配は本蔵技監の退職が決まり、愛知製鋼向けと本蔵向けの2台を発注しようとした新証拠が、本蔵氏との打合せで、FAの装置はFA保有の技術で製作するものだから、本蔵氏が購入して、それを利用させてもらうということにして、あえて愛知製鋼が購入する必要が無いと判断したことを明らかにした。
新事実②;菊池氏は、愛知製鋼の技術員である西畑・伊藤氏の両名と、3つの新型素子の図面作製や試作および、そのために必要な試作機の製作依頼をしていたことを示す新証拠で、それらの業務は愛知製鋼の業務として取り組んでいたことを裏付けた。
新事実③;菊池氏は、FA装置を借用するために必要な愛知製鋼特有の磁石治具の製作に取り組んでいた。その治具をFA装置の取り付け方についてFAと相談したところ、FAから愛知製鋼の量産用磁石治具を参考にしたいとの要望があった。愛知製鋼の業務上必要と判断して、そのままでは利用することはできない治具だと説明した上で、菊池氏は秘密管理者としての責任で、送付・秘密開示したことを数多くのメールで明らかにした。
続いて、弁護団は、菊池氏の供述を基に菊池氏の自白調書について、愛知製鋼の業務として取り組んでいた事実が、本蔵氏と共謀して愛知製鋼の秘密を盗み出した一連の犯行だと捻じ曲げられたものであることを明らかにした。菊池氏は、本人の意思とは異なる調書であると証言した。
菊池氏は、警察の取り調べの際に、愛知製鋼の業務として行っていただけだと、真実を供述し続けた。しかし、警察は、本蔵と共謀しての秘密漏洩だと、警察のストーリを押し付けることに終始し、押し問答が続いた。しかし、警察から、食い違いのたびに、関係者が君と違う事実を証言していると説得し、自分の記憶違いかもしれないと記憶操作されていったと証言した。裁判後、関係者から新事実を聞かされ、警察に騙されたことが分かり憤慨していると供述した。
さらに菊池氏は、押し問答の際に、「認めないと留置所から出られないぞ」と脅迫され、他方「認めれば即釈放で、罰金程度で済む話だぞ」と言われた。それで、この人たちではらちが明かないと思い、裁判で真実を明らかにすれば済むと思い、警察の用意した自白調書にサインすることにしたと、供述した。
最後に、菊池氏は警察の捜査の杜撰さに問題があると指摘して、証言を締めくくった。
菊池被告人が証言。
21年8月31日 NEWS
ワイヤ整列装置は、FA電子が保有していた周知技術で製作したものであった。秘密漏洩はしていない と証言。
菊池氏は、愛知製鋼の生産技術部長として部下の西畑室長と、愛知製鋼の業務上必要な新仕様のワイヤ整列装置の導入を図った。当初量産装置の製作を担当したリコーエレメックス社に見積もりを依頼した。その後極細線の専門メーカであるFA電子社の優れた技術を知って、FA電子社に新仕様を示して装置の製作を依頼したと証言した。なお警察は、両社へのこの依頼が愛知製鋼の秘密情報の漏洩に当たるとして本蔵と菊池を逮捕した。
菊池氏は、13年3月5日西畑室長同席の場で、FA電子の松永氏にこの新仕様装置の製作を依頼したところ、松永氏は自社のカタログを示してすでに類似装置の製作経験があり簡単だと回答した。マグネデザイン社の装置はFA電子が保有していた技術で製作されたもので、愛知製鋼の秘密とは何ら関係ない。4月9日事件当日のホワイトボードには愛知製鋼のノウハウが一切記載されていないことからもわかると証言した。
さらに新事実として、菊池氏は、①愛知製鋼は岐阜工場の強化を重点課題としており、愛知製鋼の業務として新仕様のワイヤ整列装置の導入を図っていたこと、および②FA電子社にその装置の製作を依頼することについて、浅野常務に報告していたことなどを、当時の書類を示しながら証言した。つまり菊池氏が西畑氏と取り組んでいた一連の業務は愛知製鋼の公認の業務であったことが明らかになった。
菊池氏の今回の証言によって、菊池氏が愛知製鋼の業務としてFA電子の保有していた技術の範囲で、新仕様装置の製作を依頼していただけであることが明白になった。そこに事件性が入り込む余地はない。
検察側と弁護団側の証人尋問はすべて終了 今後被告人質問へ
21年7月16日 NEWS
検察の立証方針は、秘密漏洩の立証に物的証拠は不要とし、西畑証人他の証言で立証ができるというものでした。
しかし、①検察側の証人尋問(9名:西畑、山本、浅野、青山、平尾、佐々木、細野、有滝、松永)の結果、証人毎に愛知製鋼の秘密内容が異なり不特定でよくわからないこと、②しかも証人らが主張する秘密を記載した社内資料は存在しないこと、および③FA電子は愛知製鋼の秘密の開示を受けておらず、秘密漏洩はなかったことが浮き彫りになりました。
本来ならこの時点で裁判は公訴棄却されてしかるべきだったと思います。
次に7月16日までの間の弁護団の証人(4名:出田、坂口、清水、竹内)の証言で、①検察が、秘密工程が記載されているとした証拠資料には、驚くことに愛知製鋼の秘密工程と称する基本工程は記載されていなかったことが判明しました。②マグネ社の装置を製作したFA電子の技術者によって、愛知製鋼の装置とは異なる機能と構造・工程を有する装置であることが明らかにされました。さらに、清水証人や竹内証人が捜査段階で脅迫された事実も証言されました。
以上で本裁判の証人尋問はすべて終わり、残るは本蔵・菊池の両被告人質問だけです。
以下は、4名の証人の証言の詳細です。
愛知製鋼の基本工程は公開情報だった。
21年6月16日NEWS
(1)FA電子の出田証人
出田証人は、FA電子が13年4月9日に本蔵氏から依頼を受けたワイヤ整列装置の製作を担当した技術者で、以前に類似装置の製作経験があり、FA電子が保有していた技術で製作したこと、およびその装置をカタログに掲載してPRしており公開情報であったことを証言した。1mmに2本のワイヤを張る程度の技術は容易(愛知製鋼の装置仕様)であるが、本蔵氏から依頼された1mmの隙間に20本のワイヤを張る技術の開発(=ピンガイド方式の考案)は非常に難しかったことを証言した。FA電子の装置は愛知製鋼の模造品でないことが明らかになった。
その後本蔵氏から、ピンガイド方式をワイヤ基準線方式に変更するための装置の改造を依頼されたが、非常識だと反対した。しかしお客の要望なので、自動回転台、CCDカメラ、位置ずれ検出装置、補正制御用コンピュータなどの装置の改造を行ったと証言し、マグネ社においてさらなる開発が行われたことが明らかになった。
これらの証言について、検察は一切反論しなかった。代わりに、出田氏のメールの中に本蔵にCCメールしていた事実をとらえて、本蔵とのやり取りを証言させようと出田氏を追及したが、本蔵氏とは面識はないし、やり取りもないと否定された。
マグネ社の独自の技術開発を証言。
21年6月16日NEWS
(2)阪口証人
阪口証人は、ワイヤ基準線方式に変更した装置を使い、5年間の歳月をかけて、苦労して操作プログラムを開発したことを証言した。出田・坂口両証人によって、ワイヤ基準線方式の本蔵特許(=ワイヤ整列装置特許)が画期的な技術であることが裏付けられた。検察はワイヤ基準線方式なる技術は20年前から愛知製鋼が保有していたと主張をしているが、完全に否定された。
検察は、これらの証言については一切反論しなかった。
秘密管理性で検察と対決。
21年7月16日,21年6月16日NEWS
(3)元愛知製鋼参与 の清水証人
清水証人は、①検察は、秘密情報の記載されている書類(QC工程表、作業標準など)が持ち出されたと主張したが、それらの書類には問題の秘密は記載されていないこと、と検察が主張する秘密なるものを記載した社内書類を見たことがないと証言した。②検察は、ワイヤ挿入装置は秘密管理エリアに指定して秘密管理していたと主張したが、そのような事実はないと否定すると同時に、秘密管理していたのはワイヤ挿入装置ではなくて、マイクロコイル製作工程であると証言した。以上の証言で、検察が主張する秘密工程なるものが、社内で秘密管理されていなかったことが示唆された。
また、③検察は12年12月4日のリコーとの会議に菊池が参加し、それが事件の端緒であるかのような立証をしているが、菊池ではなくて自分が出席していたと証言し、証拠として議事録を提出した。有滝証言(菊池が参加していた)は、事実誤認との疑いが残る。
清水証言に対して 検察は一切反論をしなかった。
その代わりに、本蔵被告とは学生時代からの付き合いだとか、なぜ裁判に傍聴に来ているのだとか、と質問し、本蔵氏の個人的つながりを強調して、証言は信用できないとの印象づくりに努めたが、清水証人から、真実を守りたいからだと反撃された。
愛知製鋼からは、“証人になるな”との圧力があったが、断ったとの証言もした。
秘密の特許性(技術的価値)で検察と対決。
21年7月16日,21年7月9日NEWS
(4)元愛知製鋼知的財産室室長 の竹内証人
1)検察は、ワイヤ挿入装置は特許として技術を公開せずに、社内でウハウとして秘密管理していた特別に重大な技術であったと主張したが、竹内証人は、それは特許性がないからノウハウ管理としただけだと検察の主張を否定した。証拠としては、①本蔵氏が、ワイヤ挿入装置は基本特許や改良特許のように高度な技術ではなくて、社内ノウハウに相当する程度の技術である旨のコメントした証拠が残っていること。また②愛知製鋼は重要な発明はすべて知的財産室に届け出ることになっていたが、それは提出されていない以上、ワイヤ挿入装置には特許性は無いと考えていたと思われると証言した。③愛知製鋼の特許戦略では製造装置を含め複合的に特許出願をすることになっていたので、もしワイヤ挿入装置の特許性があれば出願していたはずであることを指摘し、検察の主張は矛盾だらけであることを明らかにした。
2)検察は、青山氏による特許鑑定を根拠に、本蔵特許とアイチ装置(西畑レポート装置)は同じだと主張したが、竹内証人は、青山鑑定の問題点を指摘して、鑑定とはとても言えない杜撰なものだ。両装置は大きく異なっていると証言した。
3)竹内証人は、本蔵特許は愛知製鋼の1号機の秘密を流用して出願したものだと警察調書に押印したが、それはアイチの技術を一切知らないと説明したにもかかわらず、脅迫されて調書にサインさせられたもので、無効だと証言した。本蔵特許出願にあたって、本蔵特許の特許性5点を明示した証拠資料と特許庁審査官とやり取りした資料を説明し、本蔵特許の進歩性を明らかにした。これらの証言に対して、検察は一切反論をしなかった。
4)代わりに、弁理士試験に不合格になったとか、上司の了承は取っていたのか、会社の秘密文書をなぜ退職後も保有しているのか等、知的財産室長としての竹内氏の資質・能力に問題があるかのような印象づくりの質問を繰り返した。逆に、秘密文書の原紙は当然会社が保管しており、コピーや現役時代に自分が作成した資料やメモは個人が保管しておくのが慣行となっていた。後輩からの相談に対応するなどのための慣行であったことを証言した。会社とは個人的利用はしないとの暗黙の了解があるが、今回は裁判証拠として公の目的であることを考慮して提出することにした。と社会正義に沿った行動であると反撃した。
有滝証人の証言
21年5月29日 NEWS
検察側証人 リコー㈱ の 有滝証人
検察は、有滝証人から、12年12月4日の会議に菊池が出席し、リコーにアイチコピー装置の製作を打診したが、その時、愛知製鋼以外の会社で使用する装置だと感じた、との証言を引き出した。
これは、菊池がアイチ技術を盗み出そうとしていたことを暗示したものであるが、弁護団は、菊池氏はその会議には出席していないとの証拠を示して反論した。
作り話(本蔵と村田製作所による愛知製鋼のMIセンサ事業乗っ取り陰謀説)の破綻
21年3月17日 NEWS
検察側証人 元村田製作所の細野証人
検察は、細野証人から、村田製作所はアイチのMI事業の買収を検討しており、本蔵しに協力をいていただいていたとの証言を引き出して、このことが事件の動機であることを立証しようとした。
その証拠に、1)12年7月に本蔵からAMI買収の話があった。2)11月には、四社連合の話を持ち掛けられた。3)鵜飼常務を紹介するなど村田製作所によるMI事業買収工作への協力していただいた。4)買収工作失敗後は、本蔵氏に開発資金を提供してMI技術を手に入れようと企てた。との証言を引出した。これらが事件の背景であり動機であることを示唆した。
弁護団は、証拠を提示して細野証言が事実を全て曲げて証言をしていることを示した。
証拠1)本蔵は、村田製作所が高性能加速度センサを開発し、愛知製鋼が次世代MIセンサ(=磁気ジャイロ)を開発して、両者で6軸モーションセンサを開発しようと合意していたことを証拠で示した。この枠組みでは、村田製作所にはMI技術は提供されない。
証拠2)6軸モーションセンサの開発推進にあたり、7月のAMI買収を進めたが、この提案は、村田製作所にはMI技術は提供されないので、村田製作所にその気が無くて自然消滅した。この点は細野証人も認めた。
証拠3)愛知製鋼が次世代MIセンサの開発を断念したことを受けて、11月に本蔵は四社連合とJSTとで、次世代MIセンサの開発への協力を提案したが、村田製作所はその案を拒否し、愛知製鋼にMI事業の買収を申し入れた。これで本蔵との協力関係が破綻した。本蔵は村田製作所とは関係なく次世代MIセンサの開発を進めることを通告した証拠を示して、検察が主張する村田との共謀の事実はないことを立証した。
証拠4)本蔵は、当時愛知製鋼のMIセンサ事業を3社が買収を希望しており、競争して頂くことがアイチのためである旨を伝えて、村田製作所に買収交渉相手として鵜飼常務を紹介した証拠を提示した。さらに、買収交渉には、会社同士のことなので、本蔵は拘わらない旨のメールやり取りを証拠提示し、共謀事実を否定した。
証拠5)13年2月に、愛知製鋼に拒否された村田製作所は、四社連合参加する姿勢に転換した。共同開発契約を締結して推進することになった証拠を提示した。
証拠6)村田製作所とマグネ社の契約では、村田製作所には通常実施権の提供しか約束されておらず、村田製作所がMI事業を独占できる枠組みではなかったことを証拠で示した。
細野証人は、検察からの質問に対しては、その趣旨に沿って証言していたが、弁護団の反論に対して、記憶にないと逃げようとしたが、メール他の証拠を確認させられて、しぶしぶ認めざるを得なかったのが印象的であった。
さらに、本蔵らはGSRセンサ開発における村田製作所の開発負担について、村田製作所は2年程度一時的に参加しただけで、10%程度に過ぎなかったことを説明し、マグネ社の開発は村田製作所の主導の開発でなかったことを明らかにした。
以上の弁護側の反論によって、検察は、事件の動機について本蔵と村田製作所の共謀の作り話の立証に失敗した。今後は、検察が事件の動機をどのように組み立て直すのか?おそらく愛知製鋼のMI技術を不正利用して特許出願し、不正な利益を図ろうとしていたとの主張に変更せざるをえなくなったと思われる。
10/1、10/30、11/19の3回の本蔵氏の証言
1.本蔵氏の証言要旨
証拠写真は愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密を開示したものではなくて、本蔵氏の無罪を証明する証拠である。写真は、マグネ社の新設備の構想図であり、マグネ社の営業秘密に相当する。検察が犯行と主張する開示工程情報は、架空の工程であり、秘密漏洩事件そのものが事実無根である。
2.具体的主張は、
1) 裁判は、検察が提示した証拠写真(X)の記載内容が、愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密かどうかをめぐって争われている。現場にいた証人は本蔵、菊池および松永(設備業者)の3名からなるので、その3名の証言が重要である。
2) 松永証人は、当然愛知製鋼のワイヤ整列装置について何も知らなったことを前提に、2/18に写真に記載されている情報を丁寧に説明し、その場で討論されたことは、新設備の要望仕様を聞いただけで、本蔵氏から設備の構造や工程の説明は受けておらず、ワイヤ整列装置の設計・製作は自社技術(愛知製鋼からの技術提供は無い)で行うことで合意した旨を証言した。今回、本蔵氏は、写真に記載されているすべての情報を丁寧に説明し、松永氏の証言とほぼ同じ事実内容を確認した。そして、写真は松永氏に新設備仕様を要望し、その実現方策を議論し、マグネ社の新設備仕様を決定した会議で、写真は愛知製鋼の装置とは異なる装置であることを証言した。
両ワイヤ整列装置の違いは、愛知製鋼のそれは、最初にワイヤを張力熱処理(500℃)し、MI特性を与えた上で、張力を極力変えないように弾性限界以下として、ワイヤを張力フリーで切断して磁石を使って基板に張り付けてMI素子の製作を可能にする装置である。他方マグネ社のそれは、ワイヤを弾性限界以上の大きな張力で引き出して、その状態で両面テープを使って基板に張り付けて切断し、その後その張力を活用して張力熱処理(300℃)によりワイヤにGSR特性を付与してGSR素子の製作を可能にする装置である。
さらに、GSR素子はMI素子に比べて、微小な溝にワイヤを高い精度で整列させる必要があり、整列精度を±10μmから±1μmとより高い精度を実現できるもので、それは新発想の整列方式で実現した装置である。
以上、負荷張力と整列精度の違いから、両者の装置の構造と工程は、大幅に異なったものになっていることを明らかにした。なお愛知製鋼の装置の基本構造は、愛知製鋼特許(特開2019-35743)に詳細に記載されており、両装置の違いは裁判の中で明白になっている。
3) 証拠写真とマグネ社の新設備との関連について、本蔵氏は、事件前に作成した新設備仕様に関するメモを証拠として提出し、新設備は、ワイヤ整列装置の基本設計(A)に関する公知情報をベースに、新機能(B)を付け加えたものであるとのメモと証拠写真の記載内容が一致していることを立証した。
基本設計(A)に関する情報は、本蔵氏が99年にワイヤを切断後、基板に張り付ける大学版素子の製作法に代えて、ワイヤをボビンから引き出して基板に張り付けてから切断し、それを連続的に繰り返する量産仕様素子を製造する基本技術を考案して、その技術を国際会議、JST開発委託報告書およびJST主催の公開セミナで公表していたもので、公開情報であることを立証した。
新設備が有する新機能(B)は、弾性限界(40kg/mm2)よりも小さな張力を負荷する愛知製鋼の装置に代えて、新設備は弾性限界以上の大きな張力(76kg/mm2)を負荷することができる機能を有している。そのため、新設備は愛知製鋼のそれとは、装置の工程の基本設計の点、つまり、ワイヤの搬送方法、張力負荷方法、切断方法など全工程で異なることを立証した。
4) 証拠写真と愛知製鋼の設備との関連について、本蔵氏は、愛知製鋼の秘密情報(=秘密のノウハウ(C)は、西畑氏の証言および愛知製鋼特許を使って特定することができるが、愛知製鋼の秘密情報(C)は証拠写真には記載されていないことを確認した。つまり、証拠写真は、秘密開示犯行が無かったことを物語る証拠である旨主張した。また愛知製鋼の装置の秘密の核心である磁石式治具について、証拠写真には記載がないことを確認した。さらに磁石応用や多極着磁構造を利用すること自体は一般的であり、しかもその技術は微細ワイヤの仮止めに応用されていることは公知情報でおり、愛知製鋼の秘密とは言えないことが明らかになった。もちろん詳細な磁石治具の設計図面などは秘密であるが、証拠写真には図面は開示されていない。
検察は、西畑証人の証人主尋問で、愛知製鋼の装置は西畑氏が一からすべてを開発したもので、したがって装置に関する情報は愛知製鋼以外に公知情報は無いと主張し、証拠写真はワイヤ整列装置を示している以上アイチの秘密(C)の開示であると主張し、西畑証人がその旨を証言した。しかし、今回本蔵氏は、西畑証人は設計アイデアそのものに関与していない単なる実務担当者の立場であったこと、しかもリコー㈱やJST(日本科学技術機構)との契約に関与しておらず、秘密情報開示に関する取り決めを証言できる立場にないこと、さらには証拠写真に記載されている技術的意味の判定に必要な電磁理論に精通していないことを主張した。西畑証人は、(C)を立証するにふさわしい証人ではない旨を指摘した。
5) 検察は、本蔵氏による開示情報(=装置の工程①から⑦の一連の動作(D))を犯行として特定した。しかし、開示情報①から⑦の各工程はいずれも愛知製鋼の実際の工程とは違っており、その結果愛知製鋼の設備を稼働させることができない工程であること、しかも西畑氏までもが、同様の証言をした。
検察が特定した開示情報は、マグネ社の特許装置の工程(E)と酷似しており、マグネ社の特許の工程を模して作文した工程である。つまり開示情報(D)=マグネ社の特許の工程(E)である。検察は、愛知製鋼の主張、つまり「本蔵装置特許(E)=愛知製鋼の装置(C)」との主張をうのみにしており、本蔵氏の開示情報(D)=本蔵装置特許の工程(E)=愛知製鋼の装置の工程(C)、つまり(E)=(C)となって、本蔵氏が秘密漏洩したことが証明できたという立場と考えられる。現時点では、「本蔵装置特許(E)≠愛知製鋼の装置(C)」。両者は異なる装置であることは明らかになっており、上記立証は破綻している。検察は、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を直接立証すべきである。
愛知製鋼は、告訴にあたり、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を立証した技術鑑定書を作成しており、検察はそれを使って事件を立証すべきである。
6) 愛知製鋼が刑事告訴に至った端緒は、愛知製鋼が、13年8月にマグネ社の開発計画書(JST補助金申請書に記載した秘密書類)を不正に入手して、マグネ社の開発を自らの事業のリスクと判断し、マグネ社対策を決定している。そこでマグネ社の未公表特許に対して、愛知製鋼の社内技術の延長線上のもので、特許は愛知製鋼の職務発明に帰属すると独断し、訴訟を準備したり、および本蔵氏を監視する体制を整えたりしていたとの証拠が明らかになった。愛知製鋼は、本蔵氏の退職後の開発は、愛知製鋼時代の延長で、愛知製鋼に帰属すべきものとの考えに立っており、その立場に立って、本蔵氏が開発した装置についても、機械的に愛知製鋼に帰属する装置と主張していることが明らかになった。本告訴の動機が、秘密漏洩の被害にあったからか、それともマグネ社の躍進を妨害するためだったのか、疑われる事態となっていると感じた。
7) 逮捕事件後もマグネ社は開発を継続し、新設備の新機能を使って、GSRセンサ原理を発見し、NHK報道、国際会議発表や、国際的な学術誌への論文掲載と注目を集めている。証拠写真の情報とその後のマグネ社の開発との対応を説明して、証拠写真の情報は、GSRセンサ原理の発見へとつながったマグネ社の秘密であったことを明らかにした。
9月20日 雑誌記事の紹介:愛知製鋼「センサ事業」自滅。
浅野証言を踏まえて、月間雑誌FACTAは、9月20日付で、事件の真相を 愛知製鋼「センサ事業」自滅という記事で、紹介しています。参考にしていただければ幸いです。
文献資料:FACTA10月号
9月11日 愛知製鋼の浅野元副社長の証人尋問の結果(傍聴記)
今年の9月11日、当社の弁護団が、愛知製鋼の浅野元副社長(事件当時の本件の事業本部部長)の証人追及をした結果、本蔵(愛知製鋼元専務)を追い出した以降、MIセンサ事業の売上げは、激減し、センサ生産工場を閉鎖し、センサ事業を担当していた子会社AMI社を解散したこと、および高級機種指向と称して、コンビニレジでの食料異物混入検査用センサ、野球のボールの回転状況を測定する魔球、磁石式の自動運転など次々に新製品を新聞発表したが、どれも売り上げが出ていないことなど、MIセンサ事業が低迷していることを証言した。