愛知製鋼との刑事裁判について

愛知製鋼との刑事裁判について

引き続き、菊池被告人の証言。

21年9月13日 NEWS

FA電子に依頼したワイヤ整列装置や磁石治具の送付は愛知製鋼の業務一環だった。秘密漏洩とは関係ないと供述。

菊池氏は、前回事件当時までの経緯を証言した。今回は事件以降について供述した。西畑氏の協力を得て小型化素子(ワイヤ1本)、Apple向け素子(ワイヤ2本)、アレイセンサ素子(ワイヤ3本)などの3つの新型素子試作を推進していた。菊池氏がFA電子に対して依頼したワイヤ張り試験装置は、これらの3つのタイプの試作のために必要な試作機で、同氏は、第3生産技術部長という責任者の立場で、手配を急でいた。5月9日、試作機の手配と並行して、素子の図面、試作に必要なマスク金型の手配、および試作用磁石式治具の準備も始めていた。これらの一連の業務からみても、菊池氏の行為は愛知製鋼の業務であったことは明らかであると供述した。

警察は、これらの菊池氏の行動が、愛知製鋼には内緒にして本蔵氏の指示で秘密漏洩をしていたと主張しているが、菊池は事件4月9日以降の数多くの新証拠で愛知製鋼の業務として行っていたことを明らかにした。以下新事実のいくつかを列挙する。

新事実①;菊池氏は、試作機の手配は本蔵技監の退職が決まり、愛知製鋼向けと本蔵向けの2台を発注しようとした新証拠が、本蔵氏との打合せで、FAの装置はFA保有の技術で製作するものだから、本蔵氏が購入して、それを利用させてもらうということにして、あえて愛知製鋼が購入する必要が無いと判断したことを明らかにした。

新事実②;菊池氏は、愛知製鋼の技術員である西畑・伊藤氏の両名と、3つの新型素子の図面作製や試作および、そのために必要な試作機の製作依頼をしていたことを示す新証拠で、それらの業務は愛知製鋼の業務として取り組んでいたことを裏付けた。

新事実③;菊池氏は、FA装置を借用するために必要な愛知製鋼特有の磁石治具の製作に取り組んでいた。その治具をFA装置の取り付け方についてFAと相談したところ、FAから愛知製鋼の量産用磁石治具を参考にしたいとの要望があった。愛知製鋼の業務上必要と判断して、そのままでは利用することはできない治具だと説明した上で、菊池氏は秘密管理者としての責任で、送付・秘密開示したことを数多くのメールで明らかにした。

続いて、弁護団は、菊池氏の供述を基に菊池氏の自白調書について、愛知製鋼の業務として取り組んでいた事実が、本蔵氏と共謀して愛知製鋼の秘密を盗み出した一連の犯行だと捻じ曲げられたものであることを明らかにした。菊池氏は、本人の意思とは異なる調書であると証言した。

菊池氏は、警察の取り調べの際に、愛知製鋼の業務として行っていただけだと、真実を供述し続けた。しかし、警察は、本蔵と共謀しての秘密漏洩だと、警察のストーリを押し付けることに終始し、押し問答が続いた。しかし、警察から、食い違いのたびに、関係者が君と違う事実を証言していると説得し、自分の記憶違いかもしれないと記憶操作されていったと証言した。裁判後、関係者から新事実を聞かされ、警察に騙されたことが分かり憤慨していると供述した。

さらに菊池氏は、押し問答の際に、「認めないと留置所から出られないぞ」と脅迫され、他方「認めれば即釈放で、罰金程度で済む話だぞ」と言われた。それで、この人たちではらちが明かないと思い、裁判で真実を明らかにすれば済むと思い、警察の用意した自白調書にサインすることにしたと、供述した。

最後に、菊池氏は警察の捜査の杜撰さに問題があると指摘して、証言を締めくくった。

菊池被告人が証言。

21年8月31日 NEWS

ワイヤ整列装置は、FA電子が保有していた周知技術で製作したものであった。秘密漏洩はしていない と証言。

菊池氏は、愛知製鋼の生産技術部長として部下の西畑室長と、愛知製鋼の業務上必要な新仕様のワイヤ整列装置の導入を図った。当初量産装置の製作を担当したリコーエレメックス社に見積もりを依頼した。その後極細線の専門メーカであるFA電子社の優れた技術を知って、FA電子社に新仕様を示して装置の製作を依頼したと証言した。なお警察は、両社へのこの依頼が愛知製鋼の秘密情報の漏洩に当たるとして本蔵と菊池を逮捕した。

菊池氏は、13年3月5日西畑室長同席の場で、FA電子の松永氏にこの新仕様装置の製作を依頼したところ、松永氏は自社のカタログを示してすでに類似装置の製作経験があり簡単だと回答した。マグネデザイン社の装置はFA電子が保有していた技術で製作されたもので、愛知製鋼の秘密とは何ら関係ない。4月9日事件当日のホワイトボードには愛知製鋼のノウハウが一切記載されていないことからもわかると証言した。

さらに新事実として、菊池氏は、①愛知製鋼は岐阜工場の強化を重点課題としており、愛知製鋼の業務として新仕様のワイヤ整列装置の導入を図っていたこと、および②FA電子社にその装置の製作を依頼することについて、浅野常務に報告していたことなどを、当時の書類を示しながら証言した。つまり菊池氏が西畑氏と取り組んでいた一連の業務は愛知製鋼の公認の業務であったことが明らかになった。

菊池氏の今回の証言によって、菊池氏が愛知製鋼の業務としてFA電子の保有していた技術の範囲で、新仕様装置の製作を依頼していただけであることが明白になった。そこに事件性が入り込む余地はない。


検察側と弁護団側の証人尋問はすべて終了 今後被告人質問へ

21年7月16日 NEWS

検察の立証方針は、秘密漏洩の立証に物的証拠は不要とし、西畑証人他の証言で立証ができるというものでした。
しかし、①検察側の証人尋問(9名:西畑、山本、浅野、青山、平尾、佐々木、細野、有滝、松永)の結果、証人毎に愛知製鋼の秘密内容が異なり不特定でよくわからないこと、②しかも証人らが主張する秘密を記載した社内資料は存在しないこと、および③FA電子は愛知製鋼の秘密の開示を受けておらず、秘密漏洩はなかったことが浮き彫りになりました。
本来ならこの時点で裁判は公訴棄却されてしかるべきだったと思います。

次に7月16日までの間の弁護団の証人(4名:出田、坂口、清水、竹内)の証言で、①検察が、秘密工程が記載されているとした証拠資料には、驚くことに愛知製鋼の秘密工程と称する基本工程は記載されていなかったことが判明しました。②マグネ社の装置を製作したFA電子の技術者によって、愛知製鋼の装置とは異なる機能と構造・工程を有する装置であることが明らかにされました。さらに、清水証人や竹内証人が捜査段階で脅迫された事実も証言されました。

以上で本裁判の証人尋問はすべて終わり、残るは本蔵・菊池の両被告人質問だけです。

以下は、4名の証人の証言の詳細です。

愛知製鋼の基本工程は公開情報だった。

21年6月16日NEWS

(1)FA電子の出田証人

出田証人は、FA電子が13年4月9日に本蔵氏から依頼を受けたワイヤ整列装置の製作を担当した技術者で、以前に類似装置の製作経験があり、FA電子が保有していた技術で製作したこと、およびその装置をカタログに掲載してPRしており公開情報であったことを証言した。1mmに2本のワイヤを張る程度の技術は容易(愛知製鋼の装置仕様)であるが、本蔵氏から依頼された1mmの隙間に20本のワイヤを張る技術の開発(=ピンガイド方式の考案)は非常に難しかったことを証言した。FA電子の装置は愛知製鋼の模造品でないことが明らかになった。

その後本蔵氏から、ピンガイド方式をワイヤ基準線方式に変更するための装置の改造を依頼されたが、非常識だと反対した。しかしお客の要望なので、自動回転台、CCDカメラ、位置ずれ検出装置、補正制御用コンピュータなどの装置の改造を行ったと証言し、マグネ社においてさらなる開発が行われたことが明らかになった。

これらの証言について、検察は一切反論しなかった。代わりに、出田氏のメールの中に本蔵にCCメールしていた事実をとらえて、本蔵とのやり取りを証言させようと出田氏を追及したが、本蔵氏とは面識はないし、やり取りもないと否定された。

マグネ社の独自の技術開発を証言。

21年6月16日NEWS

(2)阪口証人

阪口証人は、ワイヤ基準線方式に変更した装置を使い、5年間の歳月をかけて、苦労して操作プログラムを開発したことを証言した。出田・坂口両証人によって、ワイヤ基準線方式の本蔵特許(=ワイヤ整列装置特許)が画期的な技術であることが裏付けられた。検察はワイヤ基準線方式なる技術は20年前から愛知製鋼が保有していたと主張をしているが、完全に否定された。

検察は、これらの証言については一切反論しなかった。

秘密管理性で検察と対決。

21年7月16日,21年6月16日NEWS

(3)元愛知製鋼参与 の清水証人

清水証人は、①検察は、秘密情報の記載されている書類(QC工程表、作業標準など)が持ち出されたと主張したが、それらの書類には問題の秘密は記載されていないこと、と検察が主張する秘密なるものを記載した社内書類を見たことがないと証言した。②検察は、ワイヤ挿入装置は秘密管理エリアに指定して秘密管理していたと主張したが、そのような事実はないと否定すると同時に、秘密管理していたのはワイヤ挿入装置ではなくて、マイクロコイル製作工程であると証言した。以上の証言で、検察が主張する秘密工程なるものが、社内で秘密管理されていなかったことが示唆された。
また、③検察は12年12月4日のリコーとの会議に菊池が参加し、それが事件の端緒であるかのような立証をしているが、菊池ではなくて自分が出席していたと証言し、証拠として議事録を提出した。有滝証言(菊池が参加していた)は、事実誤認との疑いが残る。

清水証言に対して 検察は一切反論をしなかった。

その代わりに、本蔵被告とは学生時代からの付き合いだとか、なぜ裁判に傍聴に来ているのだとか、と質問し、本蔵氏の個人的つながりを強調して、証言は信用できないとの印象づくりに努めたが、清水証人から、真実を守りたいからだと反撃された。
愛知製鋼からは、“証人になるな”との圧力があったが、断ったとの証言もした。

秘密の特許性(技術的価値)で検察と対決。

21年7月16日,21年7月9日NEWS

(4)元愛知製鋼知的財産室室長 の竹内証人

1)検察は、ワイヤ挿入装置は特許として技術を公開せずに、社内でウハウとして秘密管理していた特別に重大な技術であったと主張したが、竹内証人は、それは特許性がないからノウハウ管理としただけだと検察の主張を否定した。証拠としては、①本蔵氏が、ワイヤ挿入装置は基本特許や改良特許のように高度な技術ではなくて、社内ノウハウに相当する程度の技術である旨のコメントした証拠が残っていること。また②愛知製鋼は重要な発明はすべて知的財産室に届け出ることになっていたが、それは提出されていない以上、ワイヤ挿入装置には特許性は無いと考えていたと思われると証言した。③愛知製鋼の特許戦略では製造装置を含め複合的に特許出願をすることになっていたので、もしワイヤ挿入装置の特許性があれば出願していたはずであることを指摘し、検察の主張は矛盾だらけであることを明らかにした。

2)検察は、青山氏による特許鑑定を根拠に、本蔵特許とアイチ装置(西畑レポート装置)は同じだと主張したが、竹内証人は、青山鑑定の問題点を指摘して、鑑定とはとても言えない杜撰なものだ。両装置は大きく異なっていると証言した。

3)竹内証人は、本蔵特許は愛知製鋼の1号機の秘密を流用して出願したものだと警察調書に押印したが、それはアイチの技術を一切知らないと説明したにもかかわらず、脅迫されて調書にサインさせられたもので、無効だと証言した。本蔵特許出願にあたって、本蔵特許の特許性5点を明示した証拠資料と特許庁審査官とやり取りした資料を説明し、本蔵特許の進歩性を明らかにした。これらの証言に対して、検察は一切反論をしなかった。

4)代わりに、弁理士試験に不合格になったとか、上司の了承は取っていたのか、会社の秘密文書をなぜ退職後も保有しているのか等、知的財産室長としての竹内氏の資質・能力に問題があるかのような印象づくりの質問を繰り返した。逆に、秘密文書の原紙は当然会社が保管しており、コピーや現役時代に自分が作成した資料やメモは個人が保管しておくのが慣行となっていた。後輩からの相談に対応するなどのための慣行であったことを証言した。会社とは個人的利用はしないとの暗黙の了解があるが、今回は裁判証拠として公の目的であることを考慮して提出することにした。と社会正義に沿った行動であると反撃した。


有滝証人の証言

21年5月29日 NEWS

検察側証人 リコー㈱ の 有滝証人

検察は、有滝証人から、12年12月4日の会議に菊池が出席し、リコーにアイチコピー装置の製作を打診したが、その時、愛知製鋼以外の会社で使用する装置だと感じた、との証言を引き出した。
これは、菊池がアイチ技術を盗み出そうとしていたことを暗示したものであるが、弁護団は、菊池氏はその会議には出席していないとの証拠を示して反論した。


作り話(本蔵と村田製作所による愛知製鋼のMIセンサ事業乗っ取り陰謀説)の破綻

21年3月17日 NEWS

検察側証人 元村田製作所の細野証人

検察は、細野証人から、村田製作所はアイチのMI事業の買収を検討しており、本蔵しに協力をいていただいていたとの証言を引き出して、このことが事件の動機であることを立証しようとした。
その証拠に、1)12年7月に本蔵からAMI買収の話があった。2)11月には、四社連合の話を持ち掛けられた。3)鵜飼常務を紹介するなど村田製作所によるMI事業買収工作への協力していただいた。4)買収工作失敗後は、本蔵氏に開発資金を提供してMI技術を手に入れようと企てた。との証言を引出した。これらが事件の背景であり動機であることを示唆した。

弁護団は、証拠を提示して細野証言が事実を全て曲げて証言をしていることを示した。

証拠1)本蔵は、村田製作所が高性能加速度センサを開発し、愛知製鋼が次世代MIセンサ(=磁気ジャイロ)を開発して、両者で6軸モーションセンサを開発しようと合意していたことを証拠で示した。この枠組みでは、村田製作所にはMI技術は提供されない。

証拠2)6軸モーションセンサの開発推進にあたり、7月のAMI買収を進めたが、この提案は、村田製作所にはMI技術は提供されないので、村田製作所にその気が無くて自然消滅した。この点は細野証人も認めた。

証拠3)愛知製鋼が次世代MIセンサの開発を断念したことを受けて、11月に本蔵は四社連合とJSTとで、次世代MIセンサの開発への協力を提案したが、村田製作所はその案を拒否し、愛知製鋼にMI事業の買収を申し入れた。これで本蔵との協力関係が破綻した。本蔵は村田製作所とは関係なく次世代MIセンサの開発を進めることを通告した証拠を示して、検察が主張する村田との共謀の事実はないことを立証した。

証拠4)本蔵は、当時愛知製鋼のMIセンサ事業を3社が買収を希望しており、競争して頂くことがアイチのためである旨を伝えて、村田製作所に買収交渉相手として鵜飼常務を紹介した証拠を提示した。さらに、買収交渉には、会社同士のことなので、本蔵は拘わらない旨のメールやり取りを証拠提示し、共謀事実を否定した。

証拠5)13年2月に、愛知製鋼に拒否された村田製作所は、四社連合参加する姿勢に転換した。共同開発契約を締結して推進することになった証拠を提示した。

証拠6)村田製作所とマグネ社の契約では、村田製作所には通常実施権の提供しか約束されておらず、村田製作所がMI事業を独占できる枠組みではなかったことを証拠で示した。
細野証人は、検察からの質問に対しては、その趣旨に沿って証言していたが、弁護団の反論に対して、記憶にないと逃げようとしたが、メール他の証拠を確認させられて、しぶしぶ認めざるを得なかったのが印象的であった。

さらに、本蔵らはGSRセンサ開発における村田製作所の開発負担について、村田製作所は2年程度一時的に参加しただけで、10%程度に過ぎなかったことを説明し、マグネ社の開発は村田製作所の主導の開発でなかったことを明らかにした。

以上の弁護側の反論によって、検察は、事件の動機について本蔵と村田製作所の共謀の作り話の立証に失敗した。今後は、検察が事件の動機をどのように組み立て直すのか?おそらく愛知製鋼のMI技術を不正利用して特許出願し、不正な利益を図ろうとしていたとの主張に変更せざるをえなくなったと思われる。


10/1、10/30、11/19の3回の本蔵氏の証言

1.本蔵氏の証言要旨

証拠写真は愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密を開示したものではなくて、本蔵氏の無罪を証明する証拠である。写真は、マグネ社の新設備の構想図であり、マグネ社の営業秘密に相当する。検察が犯行と主張する開示工程情報は、架空の工程であり、秘密漏洩事件そのものが事実無根である。

2.具体的主張は、

1) 裁判は、検察が提示した証拠写真(X)の記載内容が、愛知製鋼のワイヤ整列装置の秘密かどうかをめぐって争われている。現場にいた証人は本蔵、菊池および松永(設備業者)の3名からなるので、その3名の証言が重要である。

2) 松永証人は、当然愛知製鋼のワイヤ整列装置について何も知らなったことを前提に、2/18に写真に記載されている情報を丁寧に説明し、その場で討論されたことは、新設備の要望仕様を聞いただけで、本蔵氏から設備の構造や工程の説明は受けておらず、ワイヤ整列装置の設計・製作は自社技術(愛知製鋼からの技術提供は無い)で行うことで合意した旨を証言した。今回、本蔵氏は、写真に記載されているすべての情報を丁寧に説明し、松永氏の証言とほぼ同じ事実内容を確認した。そして、写真は松永氏に新設備仕様を要望し、その実現方策を議論し、マグネ社の新設備仕様を決定した会議で、写真は愛知製鋼の装置とは異なる装置であることを証言した。

両ワイヤ整列装置の違いは、愛知製鋼のそれは、最初にワイヤを張力熱処理(500℃)し、MI特性を与えた上で、張力を極力変えないように弾性限界以下として、ワイヤを張力フリーで切断して磁石を使って基板に張り付けてMI素子の製作を可能にする装置である。他方マグネ社のそれは、ワイヤを弾性限界以上の大きな張力で引き出して、その状態で両面テープを使って基板に張り付けて切断し、その後その張力を活用して張力熱処理(300℃)によりワイヤにGSR特性を付与してGSR素子の製作を可能にする装置である。

さらに、GSR素子はMI素子に比べて、微小な溝にワイヤを高い精度で整列させる必要があり、整列精度を±10μmから±1μmとより高い精度を実現できるもので、それは新発想の整列方式で実現した装置である。

以上、負荷張力と整列精度の違いから、両者の装置の構造と工程は、大幅に異なったものになっていることを明らかにした。なお愛知製鋼の装置の基本構造は、愛知製鋼特許(特開2019-35743)に詳細に記載されており、両装置の違いは裁判の中で明白になっている。

3) 証拠写真とマグネ社の新設備との関連について、本蔵氏は、事件前に作成した新設備仕様に関するメモを証拠として提出し、新設備は、ワイヤ整列装置の基本設計(A)に関する公知情報をベースに、新機能(B)を付け加えたものであるとのメモと証拠写真の記載内容が一致していることを立証した。

基本設計(A)に関する情報は、本蔵氏が99年にワイヤを切断後、基板に張り付ける大学版素子の製作法に代えて、ワイヤをボビンから引き出して基板に張り付けてから切断し、それを連続的に繰り返する量産仕様素子を製造する基本技術を考案して、その技術を国際会議、JST開発委託報告書およびJST主催の公開セミナで公表していたもので、公開情報であることを立証した。

新設備が有する新機能(B)は、弾性限界(40kg/mm2)よりも小さな張力を負荷する愛知製鋼の装置に代えて、新設備は弾性限界以上の大きな張力(76kg/mm2)を負荷することができる機能を有している。そのため、新設備は愛知製鋼のそれとは、装置の工程の基本設計の点、つまり、ワイヤの搬送方法、張力負荷方法、切断方法など全工程で異なることを立証した。

4) 証拠写真と愛知製鋼の設備との関連について、本蔵氏は、愛知製鋼の秘密情報(=秘密のノウハウ(C)は、西畑氏の証言および愛知製鋼特許を使って特定することができるが、愛知製鋼の秘密情報(C)は証拠写真には記載されていないことを確認した。つまり、証拠写真は、秘密開示犯行が無かったことを物語る証拠である旨主張した。また愛知製鋼の装置の秘密の核心である磁石式治具について、証拠写真には記載がないことを確認した。さらに磁石応用や多極着磁構造を利用すること自体は一般的であり、しかもその技術は微細ワイヤの仮止めに応用されていることは公知情報でおり、愛知製鋼の秘密とは言えないことが明らかになった。もちろん詳細な磁石治具の設計図面などは秘密であるが、証拠写真には図面は開示されていない。

検察は、西畑証人の証人主尋問で、愛知製鋼の装置は西畑氏が一からすべてを開発したもので、したがって装置に関する情報は愛知製鋼以外に公知情報は無いと主張し、証拠写真はワイヤ整列装置を示している以上アイチの秘密(C)の開示であると主張し、西畑証人がその旨を証言した。しかし、今回本蔵氏は、西畑証人は設計アイデアそのものに関与していない単なる実務担当者の立場であったこと、しかもリコー㈱やJST(日本科学技術機構)との契約に関与しておらず、秘密情報開示に関する取り決めを証言できる立場にないこと、さらには証拠写真に記載されている技術的意味の判定に必要な電磁理論に精通していないことを主張した。西畑証人は、(C)を立証するにふさわしい証人ではない旨を指摘した。

5) 検察は、本蔵氏による開示情報(=装置の工程①から⑦の一連の動作(D))を犯行として特定した。しかし、開示情報①から⑦の各工程はいずれも愛知製鋼の実際の工程とは違っており、その結果愛知製鋼の設備を稼働させることができない工程であること、しかも西畑氏までもが、同様の証言をした。

検察が特定した開示情報は、マグネ社の特許装置の工程(E)と酷似しており、マグネ社の特許の工程を模して作文した工程である。つまり開示情報(D)=マグネ社の特許の工程(E)である。検察は、愛知製鋼の主張、つまり「本蔵装置特許(E)=愛知製鋼の装置(C)」との主張をうのみにしており、本蔵氏の開示情報(D)=本蔵装置特許の工程(E)=愛知製鋼の装置の工程(C)、つまり(E)=(C)となって、本蔵氏が秘密漏洩したことが証明できたという立場と考えられる。現時点では、「本蔵装置特許(E)≠愛知製鋼の装置(C)」。両者は異なる装置であることは明らかになっており、上記立証は破綻している。検察は、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を直接立証すべきである。

愛知製鋼は、告訴にあたり、「証拠写真の情報(D)=愛知製鋼の装置(C)」を立証した技術鑑定書を作成しており、検察はそれを使って事件を立証すべきである。

6) 愛知製鋼が刑事告訴に至った端緒は、愛知製鋼が、13年8月にマグネ社の開発計画書(JST補助金申請書に記載した秘密書類)を不正に入手して、マグネ社の開発を自らの事業のリスクと判断し、マグネ社対策を決定している。そこでマグネ社の未公表特許に対して、愛知製鋼の社内技術の延長線上のもので、特許は愛知製鋼の職務発明に帰属すると独断し、訴訟を準備したり、および本蔵氏を監視する体制を整えたりしていたとの証拠が明らかになった。愛知製鋼は、本蔵氏の退職後の開発は、愛知製鋼時代の延長で、愛知製鋼に帰属すべきものとの考えに立っており、その立場に立って、本蔵氏が開発した装置についても、機械的に愛知製鋼に帰属する装置と主張していることが明らかになった。本告訴の動機が、秘密漏洩の被害にあったからか、それともマグネ社の躍進を妨害するためだったのか、疑われる事態となっていると感じた。

7) 逮捕事件後もマグネ社は開発を継続し、新設備の新機能を使って、GSRセンサ原理を発見し、NHK報道、国際会議発表や、国際的な学術誌への論文掲載と注目を集めている。証拠写真の情報とその後のマグネ社の開発との対応を説明して、証拠写真の情報は、GSRセンサ原理の発見へとつながったマグネ社の秘密であったことを明らかにした。

(これより外部のウェブサイトに移動します)

9月20日 雑誌記事の紹介:愛知製鋼「センサ事業」自滅。

浅野証言を踏まえて、月間雑誌FACTAは、9月20日付で、事件の真相を 愛知製鋼「センサ事業」自滅という記事で、紹介しています。参考にしていただければ幸いです。

文献資料:FACTA10月号


9月11日 愛知製鋼の浅野元副社長の証人尋問の結果(傍聴記)

今年の9月11日、当社の弁護団が、愛知製鋼の浅野元副社長(事件当時の本件の事業本部部長)の証人追及をした結果、本蔵(愛知製鋼元専務)を追い出した以降、MIセンサ事業の売上げは、激減し、センサ生産工場を閉鎖し、センサ事業を担当していた子会社AMI社を解散したこと、および高級機種指向と称して、コンビニレジでの食料異物混入検査用センサ、野球のボールの回転状況を測定する魔球、磁石式の自動運転など次々に新製品を新聞発表したが、どれも売り上げが出ていないことなど、MIセンサ事業が低迷していることを証言した。